十種神宝 学校の基礎・基本

公立の義務教育の学校に永きにわたりお勤めだった稗田先生の、若い先生方への昔語りです。学習指導要領や、それに伴って変わってきた先生たちの意識や授業のことなど、教育現場に起こってきた今や昔のことどもを書き記していきます。

 義務教育の現場に長くお勤めだった稗田先生からお聞きしたことどもを、拙いながらもまとめてみました。
 不易流行という言葉があります。この、教育の"流行"の中から、自分だけの"不易"を見つけていただければ、これに過ぎる慶びはありません。
                                   十種神宝 主人 太安万侶

 このブログで紹介した教材の学習プリントを作成しています。興味のある方はご覧下さい。https://kandakara.booth.pm/

私は、学校からの配布文書を、それぞれの学校毎に全部保管しています。
4月から現在までためると4㎝以上の厚さになりました。
500枚程度の分量になるでしょうか。

その一枚一枚に
「この文書はどう書こうか」「わからない人いないかな」というような
作成者の気持ちがこもっているかと思います。

一方受け取った側も
「これはとっておかなくては」「いつか使うかも知れないな」と思って、
捨てずにおくことも多いようです。

しかしせっかく取っておいても
「いざ」という時にどこかに行ってしまって机の上を探し回り、
挙げ句の果てに「教頭先生~、どうなっていましたっけ~?」なんて会話が交わされ、
貸してもらった書類をコピーする、というようなことがあります。
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修学旅行等の学校行事で
「先生~、次は何するの~?」と生徒に問われ
「しおりに書いてあるぞ(`ヘ´) プンプン。」という会話とそっくりですね。

一度知らされた内容を再び誰かに聞くのって、どうなんでしょう。

印刷し、その内容をもう一度コピーする……。
生徒数400人くらいの学校で一年間に使われるインク代・紙代は、それぞれ50万円前後、
合わせて100万円ほどになるそうです。(コピー代は別)

紙で配られたものがいざという時に使えない、というのは、
時間の無駄であると同時に、お金の無駄でもあります。
学校の予算は必ずしも十分とは言えない現状では好ましい姿とは言えません。

そこで既に、印刷代の節約を目指し、既に職員会議の文書をペーパーレスにしているところもあります。

私の経験からすると、置きっぱなしの書類のほとんどは捨てても問題がないと思います。
そして、どこにあるか探すのは時間の無駄です。
ダウンロード (1)

これらの文書はサーバー上にあれば十分です。

必要な書類だけ、PDFでクラウドに上げてしまえば、いつでもどこでも見ることができます。
紙で配られても、今はスマホで保存できますよね。
本当に必要な人だけが印刷出力すれば良いのではないかと思います。

ただし、以下のことには注意しましょう。

重要な書類はデータ化できない場合がある

例えば、文書管理規定などに従い、公文書は保存しなくてはいけません。
詳しくは事務の先生へお尋ねください。
外部から来た受領印のつかれている文書は
きちんと引き継ぎができるようにペーパーベースで保存していたほうが良いと思います。

画面の大きさによって見やすさが左右される

特に細かい文字などは、タブレットならよいのですが、スマホでは苦しい場合があります。

メモの自由度が低い

特に指導案などは、各項毎に密接な関連を持って書かれています。
例えば
本時案を見るときは「指導(研究)の重点」に書かれていることがきちんと具体化されているか等、
傍線などを引きながら読むことは当然のことです。
データに直接書き込むよりも紙の方がずっと便利です。

システム、ネットワークなどの影響を受ける

個人で使うクラウド等の不具合があれば、ニュースになります。
そのくらい珍しいことです。
セキュリティも、Evernoteやドロップボックス、Googleドライブなどは、
学校のサーバーよりもずっとしっかりしているでしょう。
学校のサーバーの不具合……これは学校が心配することです。

ITに不慣れな人には使いづらい

その通りです。
しかしこの言い訳が通用するのは、定年退職を迎えたり間近な人だけです。
若い方が「不慣れですので」というのは通用しないと思います。
「ITができない」は言い訳にすらなりません。
企業では「ITは、できるようになるために自己投資して自分で習う」のが常識です。
  


学校のシステム全体をどうこうするのではなく、
まず自分に何が出来るのかを考え、実践していきましょう。

「思うにペーパーレスとは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。
それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。」
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ダウンロード (1)

1948年(S23)12月10日、国際連合は、
世界における自由、正義及び平和の基礎である基本的人権を確保するため、
全ての人民と全ての国とが達成すべき共通の基準として
「世界人権宣言」を採択しました。

そして1950年12月4日に、
この12月10日を「人権デー」と定め、
全ての加盟国及び関係機関が、この日を祝賀する日として人権活動を推進するための諸行事を行うよう要請する決議を採択しました。

日本では、残念ながらこの日は祝日とはなりませんでしたが、
法務省と全国人権擁護委員連合会が同宣言が採択されたことを記念して、
1949年から毎年12月10日を最終日とする1週間を「人権週間」と定め、
その期間中、各関係機関及び団体の協力の下、
世界人権宣言の趣旨及びその重要性を広く国民に訴えかけるとともに、
人権尊重思想の普及高揚を図る目的で集中的な啓発活動を行うようになりました。

各関係機関の中には、当然学校も含まれています。

中学校では、保護者懇談会等と重なる時期であり、
少し早めて11月中に行うところも多いのではないかと思います。
そして、この趣旨をうけて、
参観授業を行ったり講演会を開いたりする学校もあるようです。

授業で取り扱う題材は、
法務省の啓発活動強調事項17項目のどれかを取り扱うことが多いようです。

強調事項17項目
  1. 女性の人権を守ろう
  2. 子どもの人権を守ろう
  3. 高齢者の人権を守ろう
  4. 障害を理由とする偏見や差別をなくそう
  5. 同和問題(部落差別)を解消しよう
  6. アイヌの人々に対する偏見や差別をなくそう
  7. 外国人の人権を尊重しよう
  8. HIV感染者やハンセン病患者等に対する偏見や差別をなくそう
  9. 刑を終えて出所した人に対する偏見や差別をなくそう 
  10. 犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう 
  11. インターネットを悪用した人権侵害をなくそう
  12. 北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう
  13. ホームレスに対する偏見や差別をなくそう 
  14. 性的指向を理由とする偏見や差別をなくそう
  15. 性自認を理由とする偏見や差別をなくそう
  16. 人身取引をなくそう
  17. 東日本大震災に起因する偏見や差別をなくそう
( 7)は従来在日韓国・朝鮮人の方々のことを指していましたが、
ニューカマー(1980年代以降に日本へ渡り長期滞在する外国人)の方々が増えてきたことにより必要感が増してきました。

(11)と関連しますがマスメディアによる人権侵害も有名です。
ダウンロードアンパンマンの作者が作ったキャラなんですね。
学校で扱う(扱いやすい)内容としては、
( 1)~( 5)が鉄板の内容だと思います。

最近はいじめとの関連で( 7)や(11)、(17)がクローズアップされています。

( 8)は「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」で原告勝訴が確定し、
時の総理大臣が謝罪した平成13年頃、盛んに取り扱いました。

そのほかにも、地域の特性に応じた指導が展開されると思います。

「人権教育」という教科・領域があるわけではありません。

道徳には道徳の、各教科には教科の、それぞれの特性に応じた授業の展開があります。

ですから、「人権教育」の指導案を書く場合、その教科・領域のねらいに併記する形で人権教育としてのねらいを書くのがスジだと思います。

内容的に「道徳」の授業で行うことが多いですが、
「道徳」は「道徳性の育成」が目的であるのに対し、
人権教育は「自分の大切さとともに、他人の大切さを認めることができる」までいくのが目的です。
つまり、実践にまで結びつかないといけないと思います。

これをふまえた上で、授業を考えましょう。

道徳のような展開もアリですが、
もう一歩踏み出してレポート、プレゼンテーションなどを行わせる授業もあります。

それ以外にも、ワークショップ、調べ学習等さまざまな授業を見たことがあります。

おそらく各学校に「○年生は○○を行う」というような年間指導計画が位置づけられています。
また単元計画や本時案、指導用の資料も揃っていると思います。

去年と同じ今年、そして来年も今年と似たようなことをやるんだろう……
というのは、いただけませんね。

各学校の人権教育の実践を調べてみて、
今年なりの内容を考えてみるのも良いかと思います。
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みなさんの学校で、修学旅行はいつ頃行うのでしょうか。
修学旅行の時期にもよりますが、
そろそろ、来年度の修学旅行に向けての学習の準備を始める学校も多いと思います。

私は、個人的には京都観光のベストシーズンに行かせてあげたいのですが、
なかなかそうはいかないところも多いと思います。

さて、そろそろ京都は紅葉が美しい頃です。
京都紅葉の名所といえば……、
『古今集』にも謳われ、某社の紅葉ランキング1位になった
「紅葉の永観(ようかん)堂」があります。
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そして永観堂といえば、阿弥陀如来立像、別名みかえり阿弥陀を忘れることはできません。

この阿弥陀像は後ろを振り返る姿になっています。
珍しい姿ですね。

それには、次のような由来があるそうです。

ある寒い日の朝早く、
永観(えいかん)律師が阿弥陀像のまわりを行道読経しながら仏像や仏堂の周囲を右回りにめぐることをしていました。

すると突然安置してあった阿弥陀像が壇を下りて永観を先導し行道をはじめられました。

永観は驚き、呆然と立ちつくしました。

すると阿弥陀像は左肩越しに振り返り
「永観、おそし」と声をかけられました。
ダウンロード
「みかえり阿弥陀」は、このお姿を写したものと言われています。
  • みな人を渡さんと思う心こそ極楽にゆくしるべなりけれ(『千載集』永観)
「みかえり阿弥陀如来」のお姿は、
現代風言えば次のように解釈することができると言われています。
  • 自分よりおくれる者たちを待つ姿勢。
  • 自分自身の位置をかえりみる姿勢。
  • 愛や情けをかける姿勢。
  • 思いやり深く周囲をみつめる姿勢。
  • 衆生とともに正しく前へ進むためのリーダーの把握のふりむき。
(永観堂HPより引用。みかえり阿弥陀はこちら

 毎日の私たちの授業を振り返ってみると、どうでしょうか。
 
授業中元気よく発言する生徒、ちっとも授業に入り込まない生徒、
そういう目立つ生徒にばかり気をとられたり、時には振り回されたりしていませんか

しかしそのような生徒は一部に過ぎません。
大多数の生徒は目立たない生徒なのです。
そして何か問題なり何なりが起こったときにはじめて目立つ生徒になるのです。

私たちは「みかえり阿弥陀」のように、
慕い依ってくる生徒や逃げ出そうとする生徒にばかり目を向けていてはいけません

真正面から、おびただしい人々の心を濃く受け止めても、
なお、正面にまわれない人びとのことを案じて、横をみかえらずにはいられない、という
阿弥陀仏のみ心とまでは言いませんが、

自分の正面に現れない、周囲に佇む目立たない生徒にこそ
目を向け、目をかけてあげなくてはいけない
と思います。
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個人作業の共同化

ワークシートができる生徒はすぐにできてしまい、できない生徒はいつまでたってもできないものです。
できない生徒が「教えて」と言えるようにするのが目的です。

自立とは依存することから始まります。
何でも尋ねることができるようになれば、そこから意欲が生まれてきます。

しかし、できない生徒は、それができません。
ですから教師が援助するのです。

つまづきを聞き出し、見とり、それを他の3人につなげることが私たちの仕事です。

つまづきのある生徒は、授業前からわかっています。
グループ学習にはいったら、ただちに「教えて」と言えない生徒のところに生きましょう。
ただし「お節介」は逆効果で「誘い水」になるように……。
物言わぬ生徒の困り感をみとるのは教師としての修行であり、先輩の先生から学ぶべきところでしょう。

できない生徒は、最初は他の生徒の言うことを聞くだけで、あるいは丸写しにするだけで精一杯でしょう。
でもいいじゃないですか。「なんにもしないで生きるより、何かを求めて生きようよ(『ああ、人生に涙あり』TV水戸黄門主題歌  詞 山上路夫)ですよ。

チェックすること
  •   机をくっつけない生徒がいた場合、グループ開始後すぐにくっつけること。これは人権教育や道徳的な意味もあります。
  •   顔を机に伏せてしまう生徒がいた場合、1分以内に起こすこと。また起こすように他の生徒に頼むこと。
  •  教師の立ち位置は、わからない生徒に寄り添うのではなく、その生徒の声を他の生徒に聞かせる位置につくこと。これによって生徒同士をつなぐことができる。机間指導でもよくやる手ですね。
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授業の展開を工夫する

教師が喋りすぎることにより、生徒がひいてしまって授業が失速してしまうことがあります。
ワークシートを用いる授業の場合も同じです。
生徒に向ける言葉は必要最低限のものに厳選し、さっさとワークシートに取り組ませましょう。

グループ学習については、ワークシートを用いた授業をモデルとして考えてきました。
ワークシートには、「学習問題」や「学習課題」を成立させる過程、「追究」の過程、「振り返り」の過程が含まれています。

どの場面で自分の考えをしっかりと持たせるか、どの場面で自分の考えを深めさせるか、どの場面で「認識の変容」を求めるかをしっかり考えましょう。

「一斉授業は効率的だ」とする考え方も確かにあります。
しかしその中で、授業についていけない生徒たちを切り捨て、更に上を求める生徒の関心をそぎ落としてはいないでしょうか。
そうでなくても、「テストまでにここまで進まなくては……」と教科書の進度に気をとられ、駆け足の一斉授業に逃げてしまうことはないでしょうか。

とは言っても、テストまでに進度が間に合わないというのは絶対に許されることではありませんし、
一斉授業には一斉授業にしかない良さもあります。
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より効果的・効率的な学習のために、
単元の進行にメリハリをつけること、素早く押さえるところ、じっくり学ぶところを
効果的に組織することが必要です。

そしてそれは、一時間の授業の中でも言えることです。

更に、その教科・単元で身につける力を踏まえ、文科省も推奨している「発展的な内容」
……一昨年までの全国学調でいえばB問題にあたるような問題……
これに「グループ学習」でじっくり取り組ませるというのはどうでしょうか。
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ワークシートを使って授業を進めることがあると思います。
このワークシートをグループ学習でやらせてみましょう。
いわゆる「個人学習の協同化」です。

「わからない人は『ねえ、ここどうするの?』と聞きなさい」と指示します。
特に、数人の生徒しか挙手せず、多くの生徒が聞き手に回っている時は、すぐグループ学習に切り替えた方がよいでしょう。

「『わからない』と言い合える教室」を目指すのなら、
聞かれもしないのに積極的に教えることはやめさせましょう。

「わからない生徒が主体的に聞く」ことへの冒涜であり、お節介です。

4人が席を向かい合わせにして、それぞれが自分のワークシートに取り組むようにします。
そして「わからない」ところだけを、近くの人に小声で聞いたり、場合によっては隣の人のシートをのぞいたりして、問題を解決していくようにします。

夏休みの市立図書館の受験生のような学習の姿をイメージすると良いかも知れません。

それが、佐藤氏の考える「グループ学習」だと思います。
そしてこれが「意欲的に学習に取り組む」姿なんじゃないかと思います。

そんなことをしたら、教室が騒がしくなるのではないか……
そんなことをすれば、簡単に人に聞くようになるのではないか……
という疑問もあるかと思います。

しかし私の経験からすると、すぐに聞いてしまう生徒はほとんどいませんでした。
人に聞く前にまず自分で考えようとしました。
ですから、とても静かな雰囲気でグループ学習は始まります。

まあ、少数いる「すぐ聞く」生徒は、放っておいても授業から敵前逃亡したはずですから、
授業に関わっているだけ進歩だと思います。

それ以上に私たちがしなくてはいけないことは、
「聞くに聞けない生徒とグループの生徒をつなぐ」ことと
「学習が成立しにくいグループのケア」です。

「聞くに聞けない生徒」とは、何をどう聞いていいのかわからない生徒です。
必ず教室に数人いますね。
そういう「お客さん」のつまづきを見とり、
それを「○○さんは、ここのところがよくわからないようだから、教えてあげて」と他の生徒につないであげることです。

これは教師でなくてはできない、プロの仕事です。
その時、私たちが教えてしまわないように……。全員見てあげることはできませんからね。

「学習が成立しにくいグループ」とは、いわゆる「お茶目な生徒」がいるグループです。
支援の仕方はお任せします。
特に「要配慮」生徒がいる場合は、学級担任と相談しましょう。

いつグループ学習をやめるか
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昆布だしをとる時は「沸騰直前で」昆布を取り出すべきです。
それ以上やると味が濁ってえぐみが出て、料理全体を台無しにします。

グループ学習も同じだと思います。
課題が解決してしまった時点(ワークシートが終了した時点)で、その生徒の学習は終了してしまいます。
自分から進んで更に新たな課題を見つけ取り組み始めるならいいのですが、
それができる生徒は少ないでしょう。

終わった生徒から、敵前逃亡を始めるのです。
 
全員が終わるまで待っているのは、敵前逃亡の温床を育てることにつながります。
私の場合、7~8割程度の生徒ができれば、グループ学習は終了させます。

この時、席を必ず元に戻させます。
さもないと、いつまでもやっている生徒がいますから。

全体の8割の生徒がやり終わるまでにどのくらいの時間がかかるか……それを計算して「○分」と宣言するのもよいでしょう。
最初から誰もできないことを織り込み済みで「○分」と宣言するのもアリだと思います。
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