十種神宝 中学国語の基礎・基本

稗田先生は、永く公立小中学校にお勤めでした。 その先生からお聞きした、 主に中学校の国語の教材のことなどを 書き留めました。

稗田先生からお聞きした、中学校の国語の授業メモです。
HP「十種神宝 中学国語 学習の手引き」の下書きになっています。興味のある方はこちらもご覧下さい。https://y-oono.jimdofree.com/
中学生のみなさんにもわかるようにまとめました。

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第3時 黒いマス=クニマスの証明


9段落に「新たな展開があった」とありますが、
ウィキベディアによると、「新たな展開」とは、次のようなことです。
  • 2010年、山梨県の西湖にて生存個体が発見された。きっかけは、京都大学の中坊徹次がタレント・イラストレーターで東京海洋大学客員准教授のさかなクンにクニマスのイラスト執筆を依頼したことであった。さかなクンはイラストの参考のために日本全国から近縁種の「ヒメマス」を取り寄せた。このとき、西湖から届いたものの中にクニマスに似た特徴をもつ個体があったため、さかなクンは中坊に「クニマスではないか」としてこの個体を見せ、中坊の研究グループは解剖や遺伝子解析を行なった。その結果、西湖の個体はクニマスであることが判明したとし、根拠となる学術論文の出版を待たずして、12月14日夕方にマスコミを通して公式に発表された。
ダウンロード (1)

9段落には「地元の人の話では、ヒメマスの中にも黒いものがいるという」とあります。
同じく、これについては、次のように書かれています。
  • 西湖の漁師には、この発見以前から「クロマス」と呼ばれて存在自体は知られていたが、「ヒメマスの黒い変種」程度にしか認識されていなかった。このため、西湖周辺では普通に漁獲されていたほか、一般の釣り客も10尾に1尾程度の割合で比較的簡単に釣り上げており、2010年以前にも「西湖でクニマスを釣り上げた」と再発見説を唱える者がいたという。産卵を前にして黒くなったヒメマスは不味であるとされることから、「クロマス」は釣れてもリリースされることが多かったというが、当然ながら「クロマス」を食する者もおり、伝承どおり、塩焼きにしてもフライにしても美味であったと語られている。
筆者の言う「黒いマス」というのは、さかなクンが見せたクロマスのことでしょう。
クロマスは「クニマス探しの運動」の時にはクニマスではない、と判定されていました。
当時の分析技術ではしかたがなかったとも言われています。

筆者は「クニマス」「クロマス」「ヒメマス」と、似たような言葉が並ぶのを避けるためにクロマスをあえて「黒いマス」と言い換えたのかも知れません。

そして10段落以降は、黒いマス=クニマスの証明となります。

筆者の論の展開は、次のようなものです。
  • 「黒いマス」はヒメマスではない。産卵の時期と産卵する水深が違う。黒いマス=ヒメマスというのは「疑問である」(10段落)
  • 「産卵時期と場所はほぼ一致する」ため「黒いマスはもしかしたらクニマスかも知れない」(11段落)
  • 「(えらと消化器官が)全てクニマスの特徴と一致した」「遺伝子の解析を行い、黒いマスはヒメマスとは別の魚」(12段落)
「黒いマス」「クニマス」「ヒメマス」と似たような言葉が次々と出てくるため、何を言っているのかわからなくなるかもしれません。
そんなときは、「黒いマス」に傍線を引き、線でつないだり、
「黒いマス」「クニマス」「ヒメマス」を表にまとめてみたりして、
きちんと押さえておきましょう。

表の空欄を埋めるテストとして出題されるかも知れませんね。

しかし、筆者が言うことをそのまま鵜呑みにしてはいけません。

筆者は、クロマス(黒いマス)=クニマス と断定していますが、
反論はできないでしょうか。

ポイントは「遺伝子的には黒いマス=クニマスと証明されていない」点です。
クニマスの遺伝子は現存していないから確かめようがありませんでした。

ですから、黒いマスはクニマスやヒメマスの亜種かも知れないし、今まで知られていなかった新種だったという可能性もあります。

ウィキベディアによると、筆者はきちんした学術論文にする前にマスコミに公表してしまったようですね。

この13段落までで、問題提起文の答えはすべて出そろってしまいました。
では次の14段落からは何が書いてあるのでしょう。


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第2時 問題提起2の答えにあたる文を見つける

問題提起文2は「クニマスが、なぜ遠く離れた西湖で生きていたのだろう。」です。

この答えは、どこに書いてあるのでしょう。

問題提起文1の答えは6段落にありましたから、
問題提起文2の答えにあたる文は、7段落以降にあります。

第12段落以降にありそうですね。
  • この黒いマスはクニマスであった。(12段落)
  • 「幻の魚」は生きていたのだ。(12段落)
  • こうした偶然の一致によって、田沢湖で絶滅したクニマスは、遠く離れた湖底で脈々と命をつないでいたのだ(13段落)
どれも、答えっぽいですが、正解はどれでしょう。
正解のポイントは、
  • 問題提起文と対応しているか
です。

そう考えると、13段落の文が問題提起文と対応していることがわかります。
  • クニマスがなぜ遠く離れた西湖で生きていたのだろう。
  • こうした偶然の一致によって田沢湖で絶滅したクニマスは遠く離れた湖底で脈々と命をつないでいたのだ。
ダウンロード西湖

「偶然の一致」とは何か

こう聞かれたら、どこを見ればよいのでしょう。

文章の内容を考えるのは失敗のもとです。
目をつけなくてはいけない言葉は、「こうした偶然の一致」の「こうした」です。

つまり「こうした」により指示される内容を的確に答えればよいわけです。

「こうした」に近いものから順にあげると次のようになります。
  • ↓ 偶然の一致
  • ↓ クニマスが産卵して生存できる条件を備えていた
  • ↓ 田沢湖も西湖も、クニマスの産卵場所の周囲の水温は、四度だった
  • 田沢湖と西湖には共通点があった
ですから「『偶然の一致』とは何か」と問われたら、
解答の条件に応じて近い順から答えていく必要があります。



ちなみに、筆者は「命をつなぐ」と言っています。

筆者は、一匹のクニマスが生まれてから死ぬまでの、一匹の生命について言っているのではありません。
クニマスが、種として子孫を残していくことを「命をつなぐ」と言っているのです。

この13段落には筆者の意図的にミスリードをしています。

それは水深です。

田沢湖の水深と西湖の水深が異なることは、テキストの通りです。
そこで「どうして浅い西湖で命をつないでいけたのだろう」と筆者は問題提起をしています。

田沢湖と西湖の水深が異なることは、放流する以前からわかりきっていたことです。
水深が違うとクニマスが生息できないことがわかっているのなら、
最初から西湖に放流するはずがありません。

水深と産卵とは、クニマスの場合は最初から無関係なことだったのではないでしょうか。

ですから、数字に惑わされて
クニマスが西湖で生き延びてきた理由を間違えてしまわないようにしましょう。

温度さえ同じなら、クニマスはどこにでも産卵できるのですね。

以上の内容は13段落にすべて書いてあります。

黒いマス=クニマスの証明

7段落の最初に「そのクニマスが、遠く離れた西湖で見つかった」とあります。
8段落は、クニマスが絶滅したと言われてから、クニマス探しが行われたことを述べています。
そして9段落以降が「西湖で捕れたという黒いマス」はクニマスであることの説明です。

次の時間は、黒いマスがクニマスであると、どのように証明しているのだろうか読み取ってみましょう。


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「幻の魚は生きていた」は5時間扱いの単元です。
指導事項は、
B書くこと
  • ウ 伝えたい事実や事柄について、自分の考えや気持ちを根拠を明確にして書くこと。
C読むこと
  • イ 文章の中心的な部分と付加的な部分、事実と意見などとを読み分け、目的や必要に応じて要約したり要旨をとらえたりすること。
  • オ 文章に表れているものの見方や考え方をとらえ、自分のものの見方や考え方を広くすること。
となっています。

国語の授業は、
自然保護の大切さ等を考える道徳の授業や、
魚の生態等を調べる理科の授業とは違います。

国語では、なにを学習したらよいのでしょう。
imagesクニマス

第1時 問題提起文の答えにあたる文の見つけ方

2段落まで読むと、
疑問の形になっている文が二つあります。
  1. クニマスはなぜ田沢湖で絶滅したのだろう。
  2. また、絶滅したと思われていたクニマスが、なぜ遠く離れた西湖で生きていたのだろうか。
筆者は、京都大学の先生です。
この問いの答えがわからなくて、読者に聞いているわけがありません。
読者に問いかけることによって、読者を文章に引き込むための文です。
これを問題提起文と言います。

問題提起文には答えにあたる部分が必ずあります。
それはどこにあるのでしょう。
これを、より速く、より正確に見つけることが、国語では大切なことです。

まず最初の問題提起文「クニマスはなぜ田沢湖で絶滅したのだろう」の答えにあたる部分を探してみましょう。

6段落にあります。
6段落は次の二文で出来ています。
  1. こうしてクニマスは、人の手による環境の改変によって、他の多くの生物と共に田沢湖から姿を消した。
  2. そして、地元の人々の生活に根ざしていたクニマスをめぐる文化も同時に消えていった。

答えは、1.の文ですね。

なぜ1.が答えにあたる文でしょう。
  • クニマスはなぜ田沢湖で絶滅したのだろう。(問題提起文1)
  • こうしてクニマスは人の手による環境の改変によって、他の多くの生物と共に田沢湖から姿を消した。(6段落第1文)
問題提起文1と、6段落第1文とを比べてみましょう。
二つの文では、共に「クニマスは」とあります。
更に、「田沢湖で絶滅した」と「田沢湖から姿を消した」が対応しています。

そして問題提起文の「なぜ」に対応する部分が「人の手による環境の改変によって」です。

問題提起文1の答えは「人の手による環境の改変」だということがわかります。

では「人の手による環境の改変」とは、どのような中身でしょう。

これは「こうして」が指示している内容です。

「人の手による環境の改変」とは、
「こうして」の近い順にみてみましょう。

「玉川の水は田沢湖に引き入れられた」ことであり、
その結果「酸性の水はクニマスをはじめとする田沢湖の生物に打撃を与え」たためです。

そしてこの目的は「農業用水」の確保と「水力発電に利用」することです。

もし「人の手による環境の改変とは何か」とテストなどで問われた場合は、
特に指定がない場合は「こうして」に近い順に答えなくてはいけません。



ちなみに、第6段落第二文の「クニマスをめぐる文化」って何でしょう。

答えは第3段落にあります。

「出産祝いや、病気見舞い、誕生日祝いに贈られる」「地元の民話にも登場」です。
たつこ姫
田沢湖にたつ、クニマスとゆかりの深い「たつこ姫」の像

「文化」とは「ある社会の成員が共有している行動様式や物質的側面を含めた生活様式」全般を言うようです。
ですから出産祝いや病気見舞いも文化なら、民話もカルチャー(文化)なのです。

「アニメ文化」と言いますが、「アニメ文明」とは言いません。
文化は精神的な活動なのです。
(一方、文明は物質的な活動を主に指すような気がします。)

次の時間は、問題提起文2について考えてみましょう。


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第4時 言い換えに注意して筆者の主張を理解しよう

 第1段落の問題提示文の次には、こう書かれています。
  • 実は、この絶海の孤島で起きた出来事は、私たちお住む地球の未来を考えるうえで、とても大きな問題を投げかけているのである
 そして第16段落には次のように書かれています。
  • イースター島のこのような運命は、私たちにも無縁なことではない
 「イースター島のこのような運命」とは「絶海の孤島で起きた出来事」です。
 これについては第2~15段落で問題提示の解答として説明されました。
 この説明は一応科学的な内容ですから、疑いの余地は少ないと思います。

 そして「私たちにも無縁なことではない」は「大きな問題を投げかけている」に対応しています。
 第16段落は、2~15段落までをまとめた上で筆者の主張をスタートさせるための段落です。

 四時間目の授業は、第16段落以降で述べられる筆者の主張を、言い換えに注目して理解する1時間となります。
  • 第17段落 森林は、文明を守る生命線
  • 第18段落 異常な人口爆発
  • 第19段落 食糧不足や資源の不足が恒常化
等の叙述をおさえつつ、第20段落の言い換えを理解していきます。
  • イースター島=地球の対比
  • 絶海の孤島=広大な宇宙という漆黒の海にぽっかりと浮かぶ青い生命の島
  • 森林が枯渇し、島の住民が飢餓に直面=その森林を破壊し尽くしたとき、その先に待っているのはイースター島と同じ飢餓地獄
 これは市販のワークブック等にもある内容ですから、特に問題なく授業が進むと思います。

 そして筆者は、以上の考察の結果として以下のことを主張しています。
  • とするならば、私たちは、今あるこの有限の資源をできるだけ効率よく、長期にわたって利用する方策を考えなければならない
と主張し、「それが、人類の生き延びる道なのである」とダメ押ししています。

 この論展開をおさえるために、授業の半分以上は費やすと思います。

 残りの時間は、次に行う
  • 「モアイは語る」をふまえ、自分の考えを書こう
の準備にあてます。

 この文章は、読者を説得することを目的とした文章と言えます。
 筆者の説得を100%受け入れ、納得してしまうというのはどうでしょうか。
 文章を批評的に読んで、筆者の主張について自分なりの判断を下す力を伸ばさなくては、読解力がついたとは言えないと思います。

 「モアイは語る―地球の未来」という説明的文章に論理的な穴はあるのでしょうか。

 第17段落の、日本列島で文明が繁栄したことと森林との関係、地球そのものが森に支えられているといった表現は、「~深く関わっている」「~という面もある」と、あいまいに表現していますから、明確に誤りであるとは言えません。

 第18~19段落の数値も、一般的に言われているものです。
800px-World-Population-1800-2100
世界人口 1800-2100年(国連 (2004) 及びアメリカ国勢調査局の評価・推計に基づく)

 しかし、筆者の主張には、以下の疑問が指摘できます。

飢餓地獄は起こらない

 第20段落には、次のように書かれています。
  • イースター島では~どこからも食料を運んでくることができなかった。地球も同じである。
 確かに、筆者の言う通り「二〇三〇年には(地球の人口は)八十億を軽く突破」することは、
 国連の推計等からいってもほぼ確実となっています。
 もし「二十一億ヘクタールの農耕地で生活できる地球の人口は、八十億がぎりぎり」であるならば、
 現在地球の人口75.3億(2017年)ですから、あと10年で食糧危機が現実となるわけです。

 しかし筆者が主張する通り「森林資源が枯渇」すれば、地球に「飢餓地獄」が訪れるというのは本当でしょうか。

 筆者は、この部分で「イースター島=地球」と言おうとしています。
 しかし、イースター島の「どこからも食料を運んでくることができなかった」の部分と対応する地球の状況は書かれていません。
  • 絶海の孤島のイースター島では、森林資源が枯渇し、島の住民が飢餓に直面したとき、どこからも食糧を運んでくることができなかった
  • 地球も同じである。広大な宇宙という漆黒の海にぽっかり浮かぶ青い生命の島、地球その森を破壊し尽くしたとき、その先に待っているのはイースター島と同じ飢餓地獄である。
 筆者は「広大な宇宙という漆黒の海にぽっかり浮かぶ青い生命の島、地球」と詩的な表現で「どこからも食糧を運んでくること」ができない状態を暗示しようとしています。
 確かに地球以外の惑星から食物を持ってくるというのは、不可能でしょう。

 しかし、地球外から食糧を持ち込む以外に飢餓地獄から逃れるの方法があることを、条件付きで明かしています。
  • 食料生産に関しての革命的な技術革新がないかぎり(19段落)
 言い換えると「技術革新が人類の生き延びるもう一つの道である」ことに、筆者は既に気づいているわけです。

 筆者が主張したい
  • イースター島で森林を破壊した結果、文明が滅んでしまった
という説は「エコサイド(ecocide)=環境虐殺」と呼ばれる説です。
 そしてこの説は、無謀な開発と環境破壊に警鐘をならすエピソードとして知られています。

 しかし、このイースター島の文明が滅んだ原因については、現在いくつかの反論が出ています。
 例えば「モアイは歩かせて移動させたので、ころを使ったのではない」というハワイ大学の研究もあり、動画も公開されています。「モアイを運ぶために木材を切り倒したのではない」というのです。

 また、森林資源が枯渇したのは、モアイを造るためではなく、無計画で行われた焼き畑農法のせいだと考える人もいます。

森林破壊だけでは文明は滅びない

 第20段落では「森林資源が枯渇し、島の住民が飢餓に直面した」とありますが、森林破壊によりイースター文明が滅んだとは書いてありません。

 イースター島文明が滅んだ理由については第15段落に次のように書いてあります。
  • こうして、イースター島は次第に食料危機に直面していくことになった。その過程で、イースター島の部族間の抗争も頻発した。そのときに倒され破壊されたモアイ像も多くあったと考えられている。このような経過をたどり、イースター島の文明は崩壊してしまった。
 「このような経過」とはどのような経過なのでしょう。

 第15段落に限れば「(イースター島が次第に食糧危機に直面していく)過程」を指すと思われます。具体的には第15段落以前の論の展開を指していると思われます。

 イースター島の文明が崩壊した直接の原因は「部族間の抗争」です。
 人口爆発と森林破壊による食糧危機が、肥沃な土地と漁場をめぐっての部族抗争を生んだと言われています。
 モアイは部族のシンボルなので、部族間の抗争として「モアイ倒し」が盛んに行われていたようです。

 このことを筆者は知らなかったのでしょうか。
 ですから、現在の研究では次のように書くのが正しいと考えられます。
  • こうして、イースター島は次第に食料危機に直面していくことになった。その過程で、イースター島の部族間の抗争頻発した。そのときに倒され破壊されたモアイ像多くあったと考えられている。その結果、イースター島の文明は崩壊してしまった。
 ほんの少し助詞などを変えるだけで、ずいぶん内容が変わってきますね。

 確かに、森林「破壊(焼き畑農法が原因だとすると「伐採」とは言えません)」により土地が痩せ、船なども造ることができなくなったことが、食糧危機が訪れたもともとの原因かもしれません。
 しかし直接の原因は部族間の抗争だと考えられています。

 イースター島では、モアイが作られなくなってから数百年後にヨーロッパ人が到達したときは生活水準は石器時代並となっていたそうです。
 しかしまだ「文明」としては死んでしまったとはいませんでした。

 最終的にイースター島文明を崩壊させたのは、
 ヨーロッパ人による奴隷狩りと、彼らにもたらされたインフルエンザや天然痘、ペストなど疫病ためだとされています。

 イースター島の人々や彼らが築いた文明は、実際はどうだったのか、どうなったのかは、言い伝えでしか残っておらず、実はよくわかっていないというのが現状です。

 文章を細かく分析してみると、
 筆者は単純に「森林破壊→食糧危機→文明の崩壊」と主張してはいないことがわかります。
 しかし巧妙に読者がそのように理解(誤解)するような論の展開をしているのです。

 更に20段落では、次のようにまとめています。
  • 今あるこの有限な資源をできるだけ効率よく、長期にわたって利用する方策を考えなければならない。それが、人類の生き延びる道なのである。
 ここで言う「この有効な資源」とは何でしょう。
 筆者はどちらを言いたいのでしょう。
  • 今ある森林資源を、できるだけ効率よく、長期にわたって利用する方策を考えよう
  • 今あるすべての資源を、できるだけ効率よく、長期にわたって利用する方策を考えよう
 読み手は、森林資源ではなく、「有効な資源」すべてを言っているように受け取ってしまう可能性が高いと思います。
 

 確かに石油やレアアースなどは、直接的に自然由来の資源をめぐる部族間の抗争(現代では国家間の抗争、と言い換えてもよいでしょう)のもとになっています。
 これらの資源を「できるだけ効率よく、長期にわたって利用する方策」は、
 筆者の主張通り、現在世界中で努力しているような気がします。
 しかしそれ以上に文明の崩壊につながる可能性が高いのは、石油やレアアースを原因にした部族(国家)間の抗争の方ですね。

 自然由来の資源ばかりでなく、人的資源というのもあります。
 人間を「効率よく長期にわたって利用」という感覚はどうなんでしょう。

 第16段落以降の読解を進めてから、これらの反論を生徒に考えさせるというのは1時間では不可能です。

 単元の指導事項
  • ウ 文章の構成や展開、表現の仕方について、根拠を明確にして自分の考えをまとめること。
  • エ 文章に表れているものの見方や考え方について、知識や体験と関連付けて自分の考えをもつこと。
を5時間という時間枠のなかで全うするには、どうしても
  • 「説得する文章」に対して「自分の考えをまとめる」「自分の考えを持つ」
という内容をやりたくなります。
 具体的には、やはり作文を書かせたいと思います。

 そこで、筆者の論に対する反論を知識として生徒に与え、
 それらもふまえて自分の考えを次の1時間で書くという展開が自然かと思います。

 第4時は、前半で筆者の主張を理解し、
 後半で、筆者の主張の弱点とその反論を説明し、
 次の時間で、自分なりの意見を文章に書くことを予告して終わります。

第5時 この文章をふまえ、あなたの考えを書きなさい。

 高校入試等でよく出題されるものに、「この文章をふまえ、あなたの考えを書きなさい」というものがあります。
 そこで読ませるのは、論説文等の説明的文章がほとんどです。

 初見の説明的文章を読んで、その内容を理解した上で、自分の考えを書かせることによって、

 読解力と同時に表現力も見ようとするものです。
 当然、論旨を的確に把握していなくてはいけません。
 また、誤字・脱字、文のねじれ等も減点の対象となります。

 生徒は「え~」というかもしれませんが、その時は次のように指導します。
  • 来年の受験に向けての練習である 従って入試同様に採点する
  • 内容の理解は既に終わっている 従って入試より難易度は下がる
  • この課題を提出することは既に予告してある 予習をするかしないかは自由である
 次の条件を板書します
  • 800字以内(八割=640字以上書いてなければ評価対象外となる)
  • 原稿用紙の使い方に準ずる 1行目に組・氏名を書く 題名は書かない
  • 終了の合図(チャイム)と同時に提出する(時間外の提出は認めない)
  • 解答は A・B・Cの三段階評価とし、それ以外にD評価(採点対象外)がある
 あとは、原稿用紙を配り、書かせ、回収します。

採点基準例 

 夏休みの前後に意見文等を書かせたことと思います。
 その時の指導内容を採点基準とするのが良いと思います。

 私の場合は、「高校入試を想定した採点を行う」ことを生徒に伝え、次の評価基準を板書します。
  • 条件を満たしていないものは評価対象外としD評価
  • 誤字脱字等を含め原稿用紙の使い方の誤りが著しいもの、テキストの要旨を正しく捉えていないもの、テキストの読み取りに誤りがあるもの、論の展開に誤りがあるもの等はC評価
  • 結論が最初に書いてあるもの、自分の考えに対する反例をあげる(逆接の接続詞を効果的に使う)ことで説得力を持たせているもの等はA評価
  • それ以外はB評価
  • 評価は以上の基準に基づき総合的に判断される 意見の内容は、テキストの主張をふまえている限り賛否その他は問わない
 この授業は、国語科の授業をするのであって、道徳や総合的な学習の時間、特別活動の授業をしているのではありません。
 私たちが「モアイは語る―地球の未来」で教えたいことは、
 「説得する文章」に対し、
 その内容を「正確に」読み取り、批判的に分析し、自分なりの考えをまとめることです。

 がんばりましょう。


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第2~3時 問題提起文と、対応する解決文を探そう

学習問題1
 問題提起1と対応する解決文はどれか

 これは、解決文探しのウォーミングアップです。

 問題提起1に対応する解決文は「しかし、最近になって、それは西方から島づたいにやって来たポリネシア人であることが判明した」です。

 ここで「なぜこれが解決文だとわかりますか」と問います。
  • 「誰か」と聞いているので「ポリネシア人」だ
と考える生徒が多いと思います。
 しかし国語科として教えたい内容は「しかし」(接続語)と「判明した」(文末の断定表現)に注意して解決文を探すことです。

 そこで「なぜ宇宙人ではいけませんか」「『ポリネシア人が最初にこの島にやってきたのは』はだめですか」等の切り返しの発問をし、「しかし」と「判明した」に注意を向けます。

 接続後や指示語、文末表現などに生徒の注意を向けた上で、学習問題2に移ります。

学習問題2
 問題提起2と対応する解決文はどれか
学習課題2
 接続語や文末表現に注意して探そう

 問題提起2に対応するのは第7段落冒頭文です。
  • それにしても、ラノ・ララクの石切場から、数十トンもあるモアイをどのようにして海岸のアフまで運んだのだろうか
 これはすぐわかると思います。

 ポイントは「それにしても」(話題の転換)「運んだのだろうか」(同義の言葉の使用による問題提起文2の繰り返し)です。
 この二つについても「なぜこの問題提起文が問題提起2と同じだと言えますか」と切り返し、学習問題1の内容を想起させます。

 すると、「『それにしても』は話題の転換を示すから」と答える生徒がいます。
 出たらすかさず「そうですね。この直前の話題はここからの話題と違うことがわかります。ですから第七段落の前までは問題提起文1を解説するまとまりと言えます」と補足し、接続語によって段落のまとまりがわかることをおさえます。

 対応する解決文探しの場面では、
 「木のころが不可欠である」「支柱は必要だ」の部分と考える生徒もいると思います。

 これでよいか意見を発表させる中で、
 「次の段落最初に『「しかし』とある」ことに気づいた意見を取り上げ、
 「しかし」の前と後とでは、後の方が重要であることをおさえるとともに、
 この段落には更に問題提起2の下位カテゴリにあたる問題提起文があることに気づかせます。
  • モアイが作られた時代、モアイの運搬に必要な木材は存在したのだろうか
 そして「この問題を解決してから問題提起文2の解決するというわけですね。」と破籠(わりご)型の構造を解説します。
破籠構造破籠構造
 次の問題提起3を考えさせることで、一気に説明的文章の論の構成のポイントをおさえます。
  • 問題提起3 いったい何があったのか(モアイが作られなくなったのはなぜか)
には、対応する問題提起文がありません。

 第11段落冒頭の「もう一つの事実」のまとめ
  • おそらく森が消滅した結果、海岸までモアイを運ぶことができなくなったのであろう
が、問題提起3の解答文であることは、生徒はなんとなくわかると思いますが、
 その理由をしっかりと説明させることが国語科としての力を伸ばすことなのだと思います。

学習問題3
 問題提起3の解決文はどれか

 問題提起2の解答文は第10段落にあり、
 問題提起4に対応する問題提起文は第13段落「では~」という話題転換に続く文言なのですから、
 問題提起2と4に挟まれた第11~12段落が問題提起3と対応することをおさえることをおさえます。

 これを生徒が思いつくように、うまく誘導するのがポイントです。
 ヒントとして発表させる時に「問題提起3の説明はどこからどこまでか」も言わせると気づく生徒もいると思います。

 学習問題1~3をまとめると、次のようになります。
  • 提起された問題の順番通りに論は展開する
  • 問題提起文は段落まとまりの最初の方に、解決文は最後の方にある
  • 問題が解決すると話題は次の問題提起の内容に移る
  • ただし、問題提起が二つ重なった場合は、破籠式に論が展開する
 これを押さえて、問題提起4の解答文
  • 千体以上のモアイの~崩壊したと推定される
挙手の少ない生徒に答えさせ自信をもたせます。

<前へ< ・ >次へ>

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