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 「キャリア教育」の一環として職場体験学習が各校で計画されています。

 1960年代、池田勇人内閣は「働くということは、はたを楽にするということでございます」のキャッチフレーズで「所得倍増計画」を掲げ、高度経済成長をもたらしました。
 この当時は、キャリア教育は「進路指導」と言われていました。

 しかし高度経済成長下の金の卵が絶滅危惧種になって以来、中学校で進路指導と言えば進学指導のことを指すようになりました。今でも進路指導の係の先生の仕事は主に進学指導のことを指す場合が多いようですね。

 それから40年が経ち、偏差値の高い高校・大学へ行けば一生安心……そんな右肩上がりの幸せな時代は終わりました。バブルが崩壊した2000年頃には、ニートとかフリーターが増え始め、社会問題になりました。
 就職氷河期と言われ、苦労して就職したにもかかわらず若者たちが「就職後3年でやめていく」と言われたのもこの頃です。

 これに対し時の政府は「将来を担う若者たちに勤労観、職業観を育み、自立できる能力をつけること」を目的に「キャリア教育」を推進しました。「生きる力」という言葉が使われ始めたのもこの頃です。

 バブルが崩壊した当時の文科省は、20年、30年後を見越して子どもたちに「生きる力」をつけようと考えました。
 この流れの中で、特別活動や総合学習の枠の中で「生徒が事業所などの職場で働くことを通じて、職業や仕事の実際について体験したり、働く人々と接したりする学習活動」(文部科学省)として職場体験学習が始まったのです。
 ちょうど総合的学習の時間がスタートした頃です。

 そして失われた20年が経ち、バブル崩壊の頃に心配されていた「未来」がいよいよ到来しました。

 現在文科省はキャリア教育の必要性を次のように述べています。

  • 少子高齢社会の到来、産業・経済の構造的変化や雇用の多様化・流動化
  • 就職・就業をめぐる環境の変化
  • 若者の勤労観、職業観や社会人・職業人としての基礎的・基本的な資質をめぐる課題
  • 精神的・社会的自立が遅れ、人間関係をうまく築くことができない、自分で意思決定ができない、自己肯定感を持てない、将来に希望を持つことができない、進路を選ぼうとしないなど、子どもたちの生活・意識の変容
  • 高学歴社会におけるモラトリアム傾向が強くなり、進学も就職もしなかったり、進路意識や目的意識が希薄なまま「とりあえず」進学したりする若者の増加
 終身雇用制度は崩壊し、AIや外国人労働者、非正規採用者の職場に占める割合が増加する中、生徒たちにリアルに「生きる力」をつけてあげなくては、文字通り「生きる」ことのできない時代になったのです。
 自分のことなのに、ぬるくなり始めたお風呂から出られなくなったような(風呂から出れば寒い。しかし、このまま風呂につかっていてもお湯は冷めていくだけの)現状に対し何もしようとしない(「できない」ではありません。)若者たち……。年金制度も行き詰まる中、どうやって生きのびることができるのでしょうか。

 現在のキャリア教育は、これをなんとかしようとする試みなのだと思います。

 ですからキャリア教育……「職業観・勤労観を育む学習」では「人間関係形成能力」「情報活用能力」「将来設計能力」「意思決定能力」を培うこと(文部科学省)が求められているのです。

 職場体験学習は、それを行うこと自体が目的なのではありません。
 ましてやお世話になる事業所は「教える」ことのプロではありません。

 現在、職場体験学習の日そのものは「学校行事」か「総合的な学習の時間」としてカウントされていると思いますが、この学習を通して、何を学ばせ、どんな力をつけるのかを明確にし、それを生徒におろしていくのは、事前・事後の「総合的学習」あるいは「特別活動」に委ねられています。
 (だいたい、希望した職場に就職できる人間なんて、今時ほとんどいません。それが現実であることをふまえ、どう指導し、どう「学習のねらい」を達成させるかが、私たちの仕事ですよ。また、学習の成果が「キャリア教育」のねらいと合致しているといいですね。)


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