『盆土産』の指導事項は、光村図書の指導計画によると、いずれも「C 読む」領域で、次の内容となっています。
  • ア 抽象的な概念を表す語句や心情を表す語句などに注意して読むこと
  • イ 文章全体と部分との関係、例示や描写の効果登場人物の言動の意味などを考え、内容の理解に役立てること。
  • ウ 文章の構成や展開、表現の仕方について、根拠を明確にして自分の考えをまとめること。
 これらの力を生徒たちが身につける前に読解の障害となるのは、
 読解の基本となる「いつ(時間設定)」「どこ(空間設定)」「だれ(登場人物設定)」が生徒にとってつかみづらいものになっている点にあります。
 そしてそれ以上に、生徒自身が、自分の経験をもとに解釈してしまうため、よくわかっていないことを生徒自身が意識しにくい点にあります。

 ですから、生徒の素朴な疑問や教師の問いかけによって、
 実はよくわかっていないことを意識化し、正しい知識を与えた上で
 読解に役立ててあげなくてはいけません。

 それは教師の役割です。
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いつ (時間設定 何月何日の話か

 「盆土産」のお盆は「月遅れ盆」だと思います。
 これは、生徒も夏休み中にニュース等で「お盆の帰省ラッシュ」のお盆ですから、わかると思います。
 しかし、8月の何日かをしっかり把握していない生徒も多いのが現状です。この作品の場合は8月13日が迎え盆です。しかし毎年違いますから「今年の場合は」と断りを入れて指導しておきます。

 ちなみに一年生の「大人になれなかった弟たちに……」や、三年生の「挨拶」の授業を行う際に、終戦や原爆投下の年月日を言えない生徒が多いことがあります。夏休み中の話題から、終戦や原爆投下の年月日を押さえておくとよいでしょう。

 このお盆の日付をおさえた上で、この物語は8月の何日から何日の幾日間の物語かを考えさせます。
 実は、この日程を把握していない生徒が相当数います。
 たぶん、登場人物に注意が向いて、時間に関わる叙述にまで意識が向かないのではないかと思います。

 一覧表にまとめさせる等して、しっかり共通理解をもった上で読解を進めたいものです。

 次に、時系列にそった物語の概略を記します。

8月11日(迎え盆前々日)
 日暮れ 父親から速達が届く
 夜   父親、上野駅周辺で冷凍えびフライを買い、夜行列車に乗る。
8月12日(迎え盆 前日)
 朝   主人公、川で雑魚を釣る。
 昼   父親、帰省。
   午後  主人公、あぜ道で喜作に会う。
   夕食  えびフライを食べる。
8月13日(迎え盆)
 朝   父親、今日東京に戻ることを主人公に告げる。
   午後  家族で墓参りに行く。
   夕方  主人公、バス停で父親と別れる。

いつ (時代設定 いつの時代の話か

 この物語を一読すると、生徒は「現代の話ではない」ことに気づきます。
 しかし「いつ頃の話でしょう」と問いかけても、生徒にはわかりません。

 そこで、「どの部分が現代と違うと思いますか」と問いかけます。

 生徒からは「囲炉裏を使っている」「連絡に速達を使っている」(囲炉裏や速達を知らない生徒もいます)等、いろいろ出てくると思います。中には「夜行列車が走っている」(2015年のダイヤ改正により、上野発の夜行列車はなくなりました。)等も出ました。
 たくさん出てくる場合はページを区切って言わせると良いかもしれません。

 ここで大切なのは、生徒の「現代」の感覚です。本人が「現代と違う」と思えばそれで正解なのです。
 ですから、特に発言の少ない生徒を優先的に答えさせ「そうですね」と肯定的に受け止めてあげると良いと思います。

 この中で、当然「登場人物はえびフライを知らない」「えびフライが珍しい」という発言が出てきます。

 えびフライは明治時代から高級洋食としてありましたが、庶民は名前すら知りませんでした。
 えびフライが知られるようになったのは冷凍えびフライが普及して以降となります。
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 冷凍えびフライを販売したのは昭和37年(1962)、加ト吉水産(現テーブルマーク)が最初です。
 現在ではどこのスーパーでも売っている冷凍えびフライですが、発売当時は冷凍庫が普及しておらず、輸送技術も未発達だったので、とても珍しいものでした。

 このことから、この物語の舞台は、

 東京オリンピック開催に向けて高度経済成長のまっただ中、昭和40年前後の話

であることがわかります。

どこ (空間設定

 東北地方です。おそらく青森市周辺だと思われます。

 まず、台詞を教師が範読すれば生徒もわかると思います。是非読んであげてください。

 方言を使う地方に転校した主人公の疎外感が書かれている「花曇りの向こう」(1年)を想起させ、方言について触れることも授業の伏線として大切です。
 方言を使うということが、それまで「えびフライ」と言っていた主人公が父親にうっかり「えんびフライ」と言ってしまう理由を考えるヒントとなります。

 次に、ドライアイスの場面で
  • 東京の上野汚液から近くの町の易までは、夜行でおよそ八時間かかる。それからバスに乗り換えて、村にいちばん近い停留所めで一時間かかる。
という叙述からわかります。

 昭和40年前後、上野駅といえば東北地方の玄関口でした。(当然東北新幹線はまだ通っていません。)
 東北線は「握手」(3年)でルロイ修道士も仙台-上野間を往復していますから、きちんと押さえておくと来年役立ちます。

 上野駅から東北線で夜行列車に乗って八時間かかる場所は青森駅付近です。
 ですから舞台は青森県青森市周辺となります。(作者の故郷である八戸と考えるのが自然でしょう。)

 ちなみに当時東京-青森間を八時間で走った夜行列車は寝台特急で、父親が利用した可能性が高いものは上野21:00発-青森7:50着の「はくつる」か23:00発-9:30着の「ゆうづる」の2本です。
 ですから父親が降りた駅は、青森の手前に違いありません。
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 おそらく、その日の仕事を終えた父親は、昭和30年頃の8月11日の夜に、まだ閉店前の上野のアメ横でえびフライとドライアイスを買って上野郵便局で速達を出し、寝台特急に乗ったのでしょう。主人公が受け取った「伝票のような紙切れ」とはえびフライの領収書だったのかもしれませんね。


 ここまでで、だいたい2~3時間はかかります。

この項目については、生徒用に解説したものがあります。
興味のある方は、こちらへどうぞ。

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