「大人になれなかった弟たちに……」は、光村図書の指導事項によれば以下のことを指導するようになっています。

C 読むこと
  • ウ 場面の展開や登場人物などの描写に注意して読み、内容の理解に役立てること。
  • オ 文章に表れているものの見方や考え方をとらえ、自分のものの見方や考え方を広くすること。
伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項
 イ 言葉の特徴やきまりに関する事項 
  • (イ)語句の辞書的な意味と文脈上の意味との関係に注意し、語感を磨くこと。

 4時間扱いの単元ですが、個人的にはもう1~2時間使いたいところです。

 しかし多くの学校では文化祭が9月末に控えています。またその前後に定期テストを行いますから、あまり時間をとることができません。

 そこで、より効率的・効果的な授業の展開を工夫しなくてはいけません。

 文学作品読解の基本は「いつ」「どこ」「だれ」です。

 「一つの花」や「ちいちゃんのかげおくり」等、既に生徒は学んでいますから、「いつ」はすぐ生徒にわかります。終戦の年とその前年です。

 「どこ」は、テキストに「福岡から南へ二十キロくらい行った、石釜」とあります。
 実在の土地です。ネットを調べればテキストにあるような自然に囲まれた風景が観光地として出てきます。

 この作品で指導計画に基づいておさえたい内容は、それぞれの場面にしっかりとあります。
 1時間目に範読・感想をもつ等で0.5時間使うとして、展開はおおよそ次のようになります。
大人になれなかった弟たちに…_PAGE0005
第1時 後半 ヒロユキのミルクに関わる場面
  •  飲みたい「僕」とそれに対する「母」の気持ち
 これは、反復法省略法によって語られます。
 「繰り返すことによってどんな気持ちが読み取れるか」「どんな気持ちが省略されているか」考えさせます。
大人になれなかった弟たちに…_PAGE0007
第2時 親戚で疎開先を断られる場面
  •  「そのとき(指示語)の顔」
  •  「強い顔」「悲しい悲しい顔(反復法)」「美しい顔」「母の顔」の関係
  •  「いつも」
 「『そのときの顔』はどういう顔だろう」が中心発問となります。
 「そのとき」というのを曖昧にとらえる生徒がいます。「その」が指し示すのは直前の「僕に帰ろう」と言ったその瞬間の顔です。
 このときの顔は、「顔」という言葉を反復することによって読者に意識づけようとしています。

 「強い顔」「悲しい悲しい(これも反復法)顔」「美しい顔」「母の顔」

 この四つの関係を考えさせ、母の、誰にも頼らず自分だけで子どもたちを守ろうとする孤独な覚悟を読み取らせます。
 
 そして「いつも」という語に気づかせ、作者は、この時の母の気持ちを、その後何度も思い出していることをおさえます。
大人になれなかった弟たちに…_PAGE0013
第3時 母が泣くまでの場面
  •  「栄養失調です……。(省略法)」
  •  「白い乾いた道から」(情景描写=心理描写)
  •  「ヒロユキは幸せだった」と母は本当に思っていたのか
  •  「小さな小さな」(反復・漸層法)←「大きくなっていたんだね」
  •  「母は初めて泣きました」の理由
 「栄養失調です……。」の省略法では、どんな言葉が省略されているか考えさせることで「僕」の無念さに気づかせます。
 この時間の中心発問は「なぜそのとき、母は初めて泣いたのだろう」です。
 これについて気づかずスルーしている生徒もいますから、その場合は教師が注目させる必要があります。

 直接の理由は「大きくなっていたんだね」という母の気づきにあります。
 この母の気づきを明確に理解するためには、ヒロユキが亡くなってからの母の気持ちを逐っていく必要があります。

 「白い乾いた道~」の情景描写は母(及び「僕」)の虚無的な心情の表現であり、
 「ヒロユキは幸せだった」という母の台詞は、小さな子どもを守ることができなかったことへの、自己正当化の言葉です。
 そして「小さな」という言葉の繰り返しは、「大きくなっていたんだね」という母の気づきにつながる盛り上がりを演出していることに気づかせます。

 このあたりの展開は、生徒の気づきや発言をうまくとりあげ、誘導するよいでしょう。
 授業はライブであり、教師の出が重要なのです。 
大人になれなかった弟たちに…_PAGE0000
第4時 まとめ
  •  「忘れません」の意味(「忘れられません」との違いから意味を考えさせる)
  •  なぜ「ヒロユキ」とカタカナで表記されているのか
  •  なぜ「弟たちに……」という題名なのか
 これらを全てやることは、時間的にできません

 三つ提示し、好きなものをやらせ、最後の発表させても良いし、
 全体で一つのものを学習問題として与え、発表させても良いでしょう。

 ポイントは、自分が考えた内容を人に知らせる(発表する・聞いてもらう)前にきちんと書かせることが大切です。
 「○字以内で、○分間で」と条件を与え、原稿用紙に八割以上の生徒に書かせてから、発表させたり意見交換をさせます。
 そして最後にもう一度まとめさせ、感想を添えて提出させると良いでしょう。

 今後の高校入試や大学入試で求められる「書く力」の基礎となります。

 このように、この教材を4時間で扱うことを考えると、非常に駆け足で単元を進めなければいけないことがわかります。私の場合、どうしても1時間くらいオーバーしてしまいます。

 夏休みが明けてまだ残暑が厳しく、1年生は気持ちがゆるみがちの時期です。
 予習・復習をしっかりしておらず、前時の授業はもとよりテキストの内容すら頭に入れていない生徒が多くなります。

 しかし、私たちも生徒のことは言えません。

 これから一ヶ月以内に国語科としてやらなくてはならないことは何か、中間テストの範囲はどこまでか、
 しっかりと教科主任と相談しながら、あとで泣き言を言わないようにしなくてはいけません。

 気持ちをひきしめて授業に向かわなくてはならないのは、生徒も教師も同じなのです。

この項目については、生徒用に解説したものがあります。
興味のある方は、こちらへどうぞ。

「大人になれなかった弟たちに……」の学習プリントを作りました。
興味のある方は、こちらへどうぞ。


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