指導事項
 「故郷」は、すべての教科書に載っているスーパー教材です。
 光村図書によれば、この教材の指導事項は次の内容です。
  • ア 文脈の中における語句の効果的な使い方など、表現上の工夫に注意して読むこと。
  • イ 文章の論理の展開の仕方、場面や登場人物の設定の仕方をとらえ、内容の理解に役立てること。
  • ウ 文章を読み比べるなどして、構成や展開、表現の仕方について評価すること。
  • エ 文章を読んで人間、社会、自然などについて考え、自分の意見をもつこと。
 短編とはいえ、この作品を丁寧に取り扱うには、5時間という時間はそうとうキツいものです。
 しかし3年生にとってダラダラした授業は、文化祭や総合テスト・進路のことを考えるとつらいものがあります。
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 そこで、「故郷」を通じて何を追究するのかを生徒に明示し、毎時間のねらいを明確にしてメリハリのある授業を進めなくてはいけません。

単元展開のめやす
「故郷」は、6つの大きな段落から成り立っています。
  1. 帰郷の船の中(1日目)
  2. 帰宅して(2日目)
  3. ルントウに関する子供の頃の思い出
  4. ヤンおばさん
  5. ルントウの来訪(前項の4~5日後)
  6. 旅立ちの日(前項の9日後)
 これを「失望」「絶望」「希望」の三つに分けると、次のようになります。
  • 1は「美しい故郷」に対する現実の風景や状況に「失望」を感じる部分。
  • 2と3はルントウに象徴される「美しい故郷」のイメージを語る部分。
  • 4と5は、現実の人の姿を見て「絶望」する部分。
  • 6はホンルの言葉をきっかけに「希望」を語る部分。
 これらの読み取りは、主に指導事項のア・イ・ウにあたります。(ウは少し苦しいかな?)

 これでおそらく3~4時間はかかってしまいます。
 最後の「エ 文章を読んで人間、社会、自然などについて考え、自分の意見をもつこと。」で1時間。合計5時間の単元展開を目指します。

第1時 全文通読と学習問題を考える
主にやること
  • 疑問に思うところに線を引きながら聞こう」と全文を範読する。
  • 「疑問に思うところ」をノート・ワークシートに書かせ、発表させる。

 「故郷」は8,300字以上。範読するだけで30分はかかります。
 全文通読してから初発の感想をまとめさせると、それだけで1時間が終わります。すると学習問題を設定するのに更に時間をとられます。
 そこで疑問点のみ挙げさせて次時につなげます。
ダウンロード (7)アナグマ=チャーのモデル?
 生徒が考える疑問は、
 「チャーとはどのような動物か」等の素朴な疑問の他に、
 多くの生徒は最後の「希望」や「地上の道」に関わるところに疑問を持ちます。

 「希望」という単語が出た時点で「希望ってどういうことかわかりますか」と問い、「望」の字義を説明します。
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  • 「私」は、つま先立ちしてまで、何を見ようとしているのだろう。
という問いかけが、単元展開のポイントとなります。

 ただ無作為に指名していたのでは1時間にはおさまりません。
 机間巡視をしながら指名計画をたて、
 テキストのそれぞれの箇所からある程度満遍なく出させて、
  • 次の時間は、最初の部分の疑問を解決していこう
と締めくくります。

第2時 最初~母との会話にルントウが出てくるまで
学習問題
  • 「私」は故郷に帰ってきて、どんな思いを持ったのだろう。「望」の字を使って端的に説明しよう。
 この問題の答えは「失望」です。

 「失望」以外に、絶望、願望などが出てくると思います。「寂寥」や「やるせない」等の言葉をしっかりおさえると、これらは必ずしもあてはまらないことがわかると思います。
 「寂寥」や「やるせない」の意味がしっかりわかっていない生徒が多いと思いますから、しっかり説明させましょう。
 
 「なぜ引っ越しをしなければならなくなったのだろう」という疑問には、歴史的な知識が必要です。こちらから説明してあげます。 

 この流れの中で、特におさえておきたいのは、次の叙述です。
  • その美しさを思い浮かべ、その長所を言葉に表そうとすると、しかし、その影はかき消され、言葉は失われてしまう。
 これが出てくるように、生徒の発言をつかまえて、うまく問い返しをしてあげます。
  •  私の覚えている故郷は、まるでこんなふうではなかった。私の故郷は、もっとずっとよかった。
とあるように、現実の情景描写に描かれる故郷の風景や、「この家が持ち主を変えるほかなかった」現在の境遇に「失望」するのです。そして、
  • もともと故郷はこんなふうなのだ──進歩もないかわりに、私が感じるような寂寥もありはしない。そう感じるのは、自分の心境が変わっただけだ。
と納得しようとします。そして最後に
  • 「私」が思い描いていた「もっとずっとよかった」故郷とは、どんな故郷なのでしょう。
と締めくくり、次時につなげます。

第3時 ルントウの思い出
学習問題
  • 「私」にとってルントウとはどのような人物だったのだろう
 ルントウの属性は、次のようなものです。
  • 「同じ年頃なこと」
  • 「私たちは仲良くなった」こと
  • 「ルントウの心は神秘の宝庫」であること
  • ルントウとの思い出がよみがえることで「私はやっと美しい故郷を見た思いがした」こと。
 「私」は、ルントウの名前を聞いた瞬間、次の情景を思い浮かべます。
  • 紺碧の空に、金色の丸い月が懸かっている。その下は海辺の砂地で、見渡すかぎり緑のすいかが植わっている。その真ん中に、十一、二歳の少年が、銀の首輪をつるし、鉄の刺叉を手にして立っている。
 この情景描写は、「希望」部分にも登場する情景描写と重なる部分が多く、「私」が求めたもの=作品の主題を解く伏線ですから、図示する等してしっかりおさえておく必要があります。

 以上のことから、学習問題に対する答えは「ルントウ=小英雄は「美しい故郷」の象徴的な存在」ということになります。

 「『チャー』とはどんな動物だろう」等を初めとする様々な素朴な疑問が出てくるところです。
 この素朴な疑問は「私」の気持ちと同じものです。しかし、いちいちこれを考えたり説明したりすると、いくら時間があっても足りません。図鑑的な知識は、プリントのして配布してしまってもかまわないと思います。
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  • 「高い塀に囲まれた中庭から四角な空を眺めている」
 これは四合院と呼ばれる中国の建築様式です。魯迅はこの四合院が好きだったのでしょうか、北京に引っ越した先でも四合院に住んでいます。