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「シカの『落ち穂拾い』」の学習プリントを作成しました。
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第4時 仮説をたてるまでに問題はないか

 仮説は、事実をもとにしてたてられていなくてはいけません。
 適当な思いつきでは、仮説とは言えないからです。

 「仮説」の項の第一文に、次のように書かれています。
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  • 記録をつけながら、私はシカが「落ち穂拾い」をする理由について考えた
 ここで「シカが『落ち穂拾い』をする理由」とは、二つの仮説を指します。
  • 仮説一 春は、シカの本来の食物が不足している。
  • 仮説二 サルの落とす食物のほうが、栄養価が高い。
 この仮説は、以下の疑問を解決するための予想でもあります。
  • わざわざサルがいる木の下まで集まってくるのだから、サルの落とす食物には、シカにとって何か魅力があるはずだ。(=サルの落とす食物には、どんな魅力があるのだろう。→仮説二につながる。)
  • また、その行動が春に集中するというのも不思議である。(=なぜ「落ち穂拾い」は春に集中するのだろう→仮説一につながる。)
 「~はずだ」「~不思議である」の部分をきちんと疑問文に直せない生徒もいるかもしれませんから、一人一人に書かせても良いかもしれません。
 順番が入れ替わっていることを、しっかりおさえます。
 (これは、論展開を円滑にする等の筆者に都合の良い理由があったと思いますが、華麗にスルーしましょう。)

 この流れを、授業でおさえてから、本時の学習問題を据えます。

〈学習問題〉
  • 筆者の持った疑問は、正しいのだろうか

 筆者の持った疑問は、前の項の集めた記録からわかったことから生まれています。

  • 「落ち穂拾い」は、三月から五月にかけての春に集中していた(図1)
  • 「落ち穂拾い」で、シカは十六種二十二品目の植物を採食した(表1)
  • 「落ち穂拾い」をするシカの数は、一回当たり一頭から二十一頭とばらつきがあった。
  • サルが樹上で採食するときには、途中で食べ飽きて枝を捨てることなどが多く、木の下には意外に多くの植物が落下していた。

 最初の項目は図1をもととし、「春は、シカ本来の食物が不足している」という仮説一たてて図2と対応させています。
 また二番目の項目は表1をもととし、「サルの落とす食物の方が栄養価が高い」という仮説二をたてて、表2と対応させています。
 三番目と四番目は「確かにシカはサルの『落ち穂拾い』をしている」という証明になります。

図1→仮説一→図2の展開の検証

 最初の「『落ち穂拾い』は、三月から五月にかけての春に集中していた」は、図1を論拠にしています。
 ポイントは、グラフから読み取れる内容と表から読み取れる内容が一致していなように見えることです。
  • グラフで4月が極端に多いが、実際は6回しか観察されていません。
  • 逆に5月は13回も観察されていますが、グラフではそんなに高くありません。
 この理由を、「割合」という言葉を用いずにきちんと文章で説明させます。

 この、一見一致していないことに気づかない生徒も多いようです。
 しかしこれに気づくことは、将来統計のウソにだまされないためには必要なことです。
 「なぜだろう」と疑問を持たなかった生徒に疑問を持たせることは、大切な学習だと思います。

 同時に「割合」の意味を具体的に文で説明させることが指導の狙いです。

 細かく見ると、毎月100時間以上観察しているにもかかわらず、
 4月だけはたった18時間しか観察していません。

 ひょっとしたら、たまたま観察したときだけ落ち穂拾いをしていただけなのかもしれない
 ……とういことも考えられますが、そこまで疑っても仕方ないので、スルーします。
 これに疑問を持った生徒がいたなら、「4月も100時間以上観察すればよかったのにね」と言っておきましょう。

 大切なのは、
  • 例えば『アンケートでは』とか『調査によると』とよくテレビや雑誌であるけど、どんなふうに調査をするかによって、調査の結果はいくらでもコントロールできます。世の中には自分の都合のいいように調査をコントロールすることがいくらでもあります。絶対にだまされないように、統計を見るときは気をつけましょう。
と教えることです。
 国語科だけでなく、社会科や理科、数学科でも、しっかりと教えていきたいですね。

表1→仮説二→表2の検証

 二番目の「『落ち穂拾い』で、シカは十六種二十二品目の植物を採食した」というのは、表1を論拠にしています。

 しかし、このことを読み取る以上に、生徒は表1から違う情報を読み取るのではないでしょうか。
 春と秋はたくさんの種類を採食していますが、夏と冬は一種類しか採食していないということに気づく生徒も多いと思います。

 表1に書かれたことと文章に書かれたことを照合して、それで納得してしまうだけでなく、
 「なぜ触れていないのか」と疑問を持つことも大切なことだと思います。

 図1によると、100時間以上観察して、冬は数回しか落ち穂拾いに遭遇していませんから、種類が少なくて当然のことです。夏も0.01%程度の遭遇率ですから、似たようなものでしょう。

 問題は秋です。
 秋の観察回数及び総観察時間は書かれていませんからはっきりとはわかりませんが、
 冬や夏に比べると、秋はけっこう落ち穂拾いに遭遇しているはずです。
 だからいろいろな種類があるのでしょう。

 図2によれば、夏ほどで多くはありませんが、それでも秋はイネ科の草の供給量が結構多いので、
 そんなに「落ち穂拾い」をする必要がないはずです。
 確かに春よりは少ないですが、いろいろな種類のものを「落ち穂拾い」しています。

 ということは、やはり
 サルの落とす食べ物の方が栄養価が高いので、冬に備えて落ち穂拾いをする
 という側面もあるのでしょう。

 しかし、本当に「サルの落とす食べ物の方が栄養価が高い」と言ってしまってもよいか、疑問が残ります。
 なぜなら、表2の「栄養価の比較」で、「『落ち穂拾い』で採食した食物」とは、いつの季節の何の栄養価なのか、それとも、全部ひっくるめた平均なのか、そのための計算式はどうなのかが説明されていないからです。

 そこで、秋も「落ち穂拾い」をする品目が多く、回数も冬や夏よりも多いことまで考え合わせると、
 仮説は次のように書き改めることができます。
  • シカが『落ち穂拾い』をする理由は、サルの落とす食物の方が栄養価が高いためであり、特に春は、シカ本来の食物が不足しているため、頻繁に行われる
 しかし、これが正しいかどうかは、肝心の秋の観察回数及び総観察時間の資料がないため、単なる予想であって、仮説とは言えません。
 筆者ならこれらのデータを持っていると思います。
ダウンロード (3)
 テキストに全てのデータを書かなかったのは、「夏はなぜ『落ち穂拾い』をしないのか」まで検証しなくては説得力のある論文にはならないことを、筆者はわかっていたからなのではないでしょうか。

 だから、中学生向けに確実に言える部分だけを書いたのではないかと思います。(確証はありません。)

 以上のことを1時間でおさめるのは無理でしょう。
 おそらく図1→仮説一→図2で1時間がほぼ終わりますから、

 表1→仮説二→表2は軽くおさえて、最後のまとめの授業に移るのが賢明だと思います。


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