今回の学習指導要領の改訂でも強調されていますが、これからの人間に必要なのは「コミュニケーション能力」であるというのが今世紀に入ってからの潮流です。

コミュニケーション能力とは「対人的なやり取りにおいて、お互いの意思疎通をスムーズにするための能力」のことですが、
生徒にとってのコミュニケーション能力とは、具体的にどのような能力なのでしょう。

森口朗は、子どもはコミュニケーション能力を〈自己主張力〉〈共感力〉〈同調力〉の総合力と捉えていると分析しました。
〈自己主張力〉とは自分の意見を強く主張する力、〈共感力〉とは他人を思いやる力、〈同調力〉とは周りのノリに合わせる力です。もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。

  • 自己主張力…自分の意見をしっかりと主張することができ、他人のネガティヴな言動、ネガティヴな態度に対してしっかりと戒めることのできる力。80年代以降、世論によって大切だと喧伝されてきた能力であり、臨教審以来の教育政策の根幹として位置づけられてきた能力でもある。「ゆとり教育」ではこれが強調された。
  •  共感力…他人に対して思いやりをもち、他人の立場や状況に応じて考えることのできる力。従来から学校教育で大切と考えられ、リーダー性にとっても絶対的に必要とされ重要視されてきた能力。多くの教師が「いい子」「力のある子」と評価する要素にもなっている。
  • 同調力…バラエティ番組に代表されるような「場の空気」に応じてボケたりツッコミを入れて盛り上げたりしながら、常に明るい雰囲気を形成する能力。子どもたちによって現代的なリーダーシップには不可欠と考えられている、現実的には最も人間関係を調整し得る能力。毒舌タイプの級友にツッコミを入れて逆にオトしたり、大人しい子やボケ役の子をイジじって盛り上げたりしながら、「場の空気」によって人間関係を調整していく、そうした高度な能力である。
生徒たちはこの三つの総合力を子どもたちは「スクール・カースト」(=学級内ステイタス)を測る基準としている、というのです。
そして森口は、現代の学級が次の八つのキャラクターによって構成されている、と分析しました。
  1.  スーパーリーダー(自己主張力・共感力・同調力のすべてをもっている)
  2.  残虐なリーダー(自己主張力・同調力をもつが、共感力に欠ける)
  3.  栄光ある孤立(自己主張力・共感力をもつが、同調力に欠ける)
  4.  人望あるサブリーダー(共感力・同調力をもつが、自己主張力に欠ける)
  5.  お調子者・いじられキャラ(同調力をもつが、自己主張力・共感力に欠ける)
  6.  いいヤツ(共感力をもつが、自己主張力・同調力に欠ける)
  7.  自己中心(自己主張力をもつが、共感力・同調力に欠ける)
  8.  何を考えているかわからない(自己主張力・共感力・同調力のどれももたない)
第2位の「残虐なリーダー」とは、自己主張の強い、ノリのいい生徒です。ノリが良い場合、場の空気によっては相手をからかったりバカにしたりと、「残虐な」行動を平気でとることがあります。
第3位の「栄光ある孤立」の場合は、空気が読めず思ったことをすぐ口にする生徒です。空気が読めませんから周囲から浮いてしまいます。
第4位の「人望あるサブリーダー」は相手の気持ちを思いやったり場の空気を読んだりすることができますが、自己主張をしません。ですからいじめに対しては第三者のふりをします。
第5位の「お調子者」は、ノリだけで生活している生徒です。自己主張もしませんから、尻馬に乗るタイプですね。

さて、カースト最上位の「スーパーリーダー」は、
スーパー戦隊シリーズで言うなら「赤の魂を受け継ぐ者」伝説の戦士アカレッドのような存在です。
DzC_QGTUUAAP2rP©東映
アカレッドは、「○○周年」という特別なシリーズの更に特別な回や、映画版でもごく特殊な状況でない限り現れません。
同じように「スーパーリーダー」は現在の学級にはほとんどいないレアな存在だと思います。

それに対して、「お調子者」「いい奴」「自己中心」はかなりの数がいるようですね。
ひょっとしたら「残虐なリーダー」もいるかも知れません。

みなさんの指導している学級ではどうですか?
この集団構成が現在の学級集団の統率を著しく難しくしているというのです。

では、どうしたらよいのでしょう。(次回へ続く)

参考文献 森口朗(『いじめの構造』新潮新書2007)


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