Missyon Impossible

昔々「スパイ大作戦」というアメリカのテレビ番組がありました。
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アメリカ政府が手を下せない極秘任務を遂行するスパイ組織IMF(Impossible Missyon Forse)の活躍を描くアクションドラマです。毎回「当局」からオープンリールのテープレコーダーでメンバーに指示が届き「君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。」という台詞と同時に、そのテーブレコーダーが爆発する、というシチュエーションは、その後の様々な番組に影響を与え、パロディーを生みました。

この「Missyon Impossible」とは「実行不可能な指令」という意味です。「当局」の無茶振りの指令を奇想天外な方法で解決していく、というのがこの番組の醍醐味でした。

いよいよ本格的な漢文の学習となります。しかし光村図書では、この「漢詩の風景」に3時間、三年生の「学びて時にこれを習ふ(論語)」で2時間という指導時数となっています。漢文・漢詩の読解に必要な返り点等の知識は一年生「今に生きる言葉(故事成語)」で2時間で扱ってある、ということになっています。
三年生の復習テストや、塾などの模擬テストのことを考えると、この「漢詩の風景」である程度の力をつけておかなくてはいけません。

しかし、はっきり言って、無理……Missyon Impossibleです。

入試問題を見ると、返り点についてもレ点と上中下点が複合している問題はもちろん、一レ点や否定文字、再読文字等が出題されています。
文法事項もそうですが、入試を考えた場合、教科書の扱いや指導時数には?がつくことがたくさんあります。
だからこその入試改革なのかも知れませんが、これでは古文離れや文学離れが進んでもしかたがありません。
そもそも、こういう基礎知識なしで、どうやって新しい知識を創り出そうというのでしょう。

と愚痴を言ってもしかたがありませんから、どうやってやっているか説明します。

1時間目前半 テンポ良く進めよう

入試や定期テストを考えた場合、生徒に教えなくてはならない基礎的事項には、以下のものがあります。
  • 「白文」「訓読文」「書き下し文」と、返り点等の漢文読解に関わる知識
  • 「五言絶句」等の形式や「起承転結」といった構成法、またそれらと関連する対句・押韻
そこでまず、「春暁」で「白文」「訓読文」「書き下し文」の説明と、返り点等の関係を説明します。

  1. 「春」の字を掲示し、どういう意味か答えさせる。
  2. 「眠」の字を掲示し、どういう意味か答えさせる。更に「春眠」でどういう意味になるか考えさせる。
  3. 「不」の字を掲示し、どういう意味か答えさせ、何かを否定する字であることをおさえる。
  4. 「覚」の字を掲示し、これは「はっきりわかる」「目がさめる」という意味があることをおさえる。更に「不覚」で「わからない」「目がさめない」という意味になることをおさえる。
  5. 「暁」の字を掲示し、どういう意味かを答えさせ、「夜明け」という意味であることをおさえる。
  6. 「不覚暁」でどういう意味になるか考えさせ、「夜が明けたのがわからない」という意味になることをおさえる。
  7. 「春眠-不覚暁」とつなげると、どういう意味になるかを答えさせる。
  8. 「春の眠りは、夜が明けたのもわからない」のはなぜかを考えさせ、答えさせる。
  9. 「春眠不覚暁」の順番でなく、送り仮名をつけて順序を入れ替えれば漢字仮名交じり文として「春眠、暁を覚えず」と読めることを教える。
  10. 返り点をつけ、「白文」「書き下し文」「訓読文」の関係を教える。
生徒の考える力を育てるためには、この流れをゆっくりやりたいところですが、これに時間をかけていると『春望』までたどりつきません。15分程度でテンポ良く片付けたいところです。どんどん指名し、ノリで授業を進めます。

1時間目後半 「春暁」で漢詩の基礎知識をおさえよう

一時間目の後半では「春暁」を使って、漢詩の形式と構成法・押韻と、返り点の打ち方(読み方)の指導をします。

ここでフル活用するのは教科書の解説部分です。
  1. 「処々聞啼鳥」を掲示し、「泣」「鳴」とは違う「啼」の意味を教え、どんな意味になるか、前の行とのつながりで考えさせる。
  2. 一行目のレ点と、二行目の一二点の使い方を教える。返り点の知識は、一年生で教えたと言っても、生徒はほぼ忘れてしまっていますから、その復習です。
  3. 「いつ」「どこ」を考えさせる。一行目から春の朝と言うには少し遅い時間であること、「聞」とあるので実際の風景は見ていないため、寝床の中であることをおさえる。
  4. 「夜来風雨声」を掲示し、急に暗く不安なイメージの字が登場したことに気づかせる。「来」には「~以来ずっと」の意味があることを教え、どんな意味になるかを考えさせる。
  5. 「花落知多少」を掲示する。
  6. 「花落」を前の行とのつながりで「ああ、昨晩の風雨で花が散ってしまったのかな」と考える生徒が多いので、「花」は桃の花であることを教えるのと同時に「散った桃の花が地面に敷き詰められて、地上も樹上もピンクに染まっている」ことをおさえる。「知多少」は様々な訓読法があるので軽く流し、教科書の解説文に移る。
  7. 教科書の解説文を範読し、大切なところに傍線をひかせる。傍線をひかせるは「明るくのどかな気分」「四句から成る漢詩を、絶句」「『起承転結』という構成法」「起句」「承句」「転句で、場面が転換」「全体を締めくくる結句」「春の朝の気分」です。
  8. 漢詩の形式と漢詩の構成法を板書し、まとめる。ここでは「五言絶句」「五言律詩」「七言絶句」「七言律詩」をおさえる。
  9. 漢詩には押韻があることを教え、各形式には決まった句に韻がふんであることを教える。「春暁」の場合は、原則以外に一行目にも押韻があることを教える。
ちなみに「啼」ですが、妖怪の子泣きじじいは児啼爺とも書きます。
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妖怪のなき声を鳥獣のそれに例えているのですね。赤ん坊だって悲しくて泣くのではありませんから、この字を使うのかもしれません。

ここまでを一時間で終わらせることができたら、たいしたものだと思います。

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「漢詩の風景」を自習で進めていけるプリントをBOOTHにアップしました。
是非参考にしてください。

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