筆者は、解剖学に基づいて描かれたダヴィンチの『最後の晩餐』の手の描写を「手のポーズの見本帳」「心の動きの見本帳」と言い「弟子達の動揺」を表現していると言っています。

さらっと言っていますが、生徒には具体的にはわからないでしょう。

キリストを中心にして、右側に顔の出ている人物から見ていきましょう。

トマス(イエスの右隣)
聖書では、情熱はあるがイエスの真意を理解せず少しずれている人物として描かれています。イエスが復活した時も、他の弟子たちの言葉を信じないで、実際にイエスに会ったとき、ロンギヌスの槍でつかれたイエスのわき腹の傷に自分の手を差し込んでその身体を確かめたとも言われていることから「疑い深いトマス」とも言われています。
右手の指を一本立てていますが、これは「裏切り者は一人だけですか」とイエスに聞いていると解釈されていますが、イエスの復活の際にわき腹の傷に指を差し込んだことを暗示しているとも言われています。

大ヤコブ(イエスの右二人目)
「雷の子」と呼ばれるくらい激しい性格とされる彼は、両手を広げ大げさな身振りで驚きを表現しています。隣のトマスの表情と比べてみると、その性格の違いがはっきり出ています。

トマス・大ヤコブトマスと大ヤコブ

フィリポ(イエスの右三人目)
胸に手をあてて「まさか私ではないでしょうね」とでも言うように、イエスに何か訴えかけています。

フィリポフィリポ

マタイ・ユダ・シモン(イエスの右四~六人目)
三人とも手のひらを上に向けています。この三人は互いに顔を見合わせ、何か話しています。イエスから一番離れた場所ですから、キリストの言葉がはっきり聞こえず「今、主は何とおっしゃったのか?」と問い合っている姿に見えます。

ヨハネ(イエスの左一人目)
聖書に「イエスの最も愛した弟子」とされている人で、「黙示録」を残しました。聖書で彼はイエスに寄りかかっており、彼が「この中に裏切り者がいる」と言ったとき「それは誰ですか」と尋ねたとされています。ダヴィンチの絵はこの直後の状態を描いたものなのかも知れません。隣のペドロが何か話しかけ、彼は両手を組み合わせています。ペドロの話を静かに聞いているようです。

ペトロ(イエスの左二人目)
ペトロは12使徒のリーダーです。彼は立ち上がり、左手でイエスを指さし、右手はナイフを持って腰にあてています。「裏切り者は殺してやりましょう」と言っているのでしょうか。彼はイエスが捕らえられるときに、追っ手の耳をナイフで切り落としています。

ユダ(イエスの左三人目)
裏切りがバレていることがわかったユダの右手には、裏切りの代償として受け取った銀貨三十枚を入れた袋が握りしめられています。
ペトロ・ユダ・ヨハネヨハネ・ペテロ・ユダ

アンデレ(イエスの左四人目)
両手を胸のあたりにあげた、驚きの手です。
ヤコブ・アンデレアンデレと小ヤコブ

小ヤコブ(イエスの左五人目)
左手を伸ばしています。ペトロに「ちょっと待て」と言っているようにも、ユダを指さして「こいつです」と言っているようにも見えます。

パルトロマイ(イエスの左六人目)
テーブルに両手をつき、立ち上がった姿です。イエスから遠い位置にいるのでよく聞き取れず思わず立ち上がったのでしょうか、それとも「なんだと!」と立ち上がったのでしょうか。

ざっと見てみましたが、これを教科書の挿絵をみながら解説させるより、生徒を13人並ばせてポーズをとらせ、どんな気持ちか説明させるのが手っ取り早いでしょう。

それまでの『最後の晩餐』は宗教画として聖書の説明のために描かれたものでした。
ですからここに描かれた十二使徒たちは皆キリスト教の「聖人」です。ダヴィンチは驚きや怒り、悲しみを持つ生身の人間として描こうとしたのです。
・・・・・・・・・・・・・・・
実際に授業で使用したプリントをBOOTHにておわけいたします。
よろしければご利用ください。


国語科教育ランキング