「走れメロス」は指導時間6時間の単元です。指導事項は、次のようになっています。

  • ア 抽象的な概念を表す語句や心情を表す語句などに注意して読むこと。
  • イ 文章全体と部分との関係、例示や描写の効果、登場人物の言動の意味などを考え、内容の理解に役立てること。
  • ウ 文章の構成や展開、表現の仕方について、根拠を明確にして自分の考えをまとめること。
言語活動例として、次のものがあがっています。
  • ア 詩歌や物語などを読み、内容や表現の仕方について感想を交流すること。
これだけトンデモ設定てんこ盛りの小説ですから、テキストをもとに主題や人物の心情等を読解・追究させることはためらわれます。
特に、きっちり読めば読むほど主人公の性格・行動は異常ですから、道徳的な文言を単元のゴールに入れるのは絶対に避けたいと考えます。

「走れメロス」は、原本の末尾に「古伝説とレシレルの詩から」とあるように元ネタがあります。「レシレルの詩」とはシラーの詩「人質」のことです。これは指導書にも載っています。そこで、この「人質」と比較しながら読むことを通し、作者が書き加えた内容・書き改めた内容から作者の意図を考える単元展開を考えました。

1 全文を通読し、感想をもつ

「走れメロス」全文に行番号をつけたものを印刷し、範読します。
行番号をつけるのは、その後の授業で、どこのことを行っているのか共通に理解するためです。
範読するのは、この作品の、テンポが良くたたみかけるような表現や、演劇的な台詞回しを生徒に感じさせるためです。
私は講談師のイメージで、部分的にはラジオドラマ風に読み聞かせています。
解説しながらゆっくり演ずると、授業の半分以上はそれで終わってしまいます。
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この読み聞かせを終わると、初発の感想を書かせます。
場面の緊張感やメロスの心情が伝わるように演劇的な読み聞かせを行うのですから、メロスに否定的な感想を持つ生徒はほとんどいません。
これを書かせて発表させ、一時間が終わります。

2 「走れメロス」を批判的に読み、疑問点を出し合う

授業の最初に「『走れメロス』を読んで、疑問に思ったこと、もっと知りたいことはないか」と問います。

最初から疑問等が出てこなくてもかまいません。
出てきたら「そうだね、よく気がついたね」と板書しておきます。

「他にも、同じ2年生でこの話に疑問をもった人がいるんだよね」と行って、「算数・数学の自由研究」作品コンクール(理数教育研究所 2013)の「メロスの全力を検証」を配布します。

ここに書かれているのは、メロスは全力で走ってなどいない、という内容です。
黙って読ませ、内容をおさえながら論旨をまとめます。

そして「『走れメロス』は、今まで学習してきた文学的文章よりもずいぶんとツッコミどころがある作品だと言われています。自分たちも、そのおかしなことを探してみましょう」と考えさせます。
前時に配布したプリントに傍線を引かせ、その箇所を疑問や矛盾とともに発表させます。

するとさまざまな疑問や矛盾点が出てきますから、これらは「謎」としてしっかり取り上げます。
この中に「メロスはなぜ走り通したか」や「なぜ王様は改心したか」など、主題に関わる疑問も出てきます。
これらはきちんと取り上げ「これは大切な疑問だから、単元の最後までしっかりとっておいてね」と全員に伝えます。