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二時間目 なぜクラスの友だちとうまくいかないのか

第2大段落を読んで「具体的に明生君は、学校生活の悩みはどのようなものか」と問います。

いろいろな言い方で返ってくると思いますが、大切なことは、それはどこに書いてあるのか、どこからわかるのかを説明させることです。

明生君の実態は、次のように書かれています。
  • 友だちといえるものはできていない。
  • なかなかうまくいかない。
この原因は、
  • (話しかけられても)うまくつながらない。
  • それで会話は終了。
  • 空気を持て余して
  • 思いつくのは後になってからだ。
とあります。
大阪ルール11

会話がうまくつながらず、「あのときああすりゃよかった」と後悔ばかりしているのです。

この時間の前半のポイントは、
  • 空気を持て余す
  • 晴れることを放棄したような空
  • 生ぬるい息をはいた
の意味をしっかりとおさえることを通し、叙述に基づいて正確に読むクセをつけていくことです。

この叙述が明生君の心情を表現しているということは理解できると思いますが、「なんとなくわかるが、説明できない」生徒がほとんどです。

思考力・判断力・表現力を考えた場合、言葉で説明できないとわかったことにはならないのです。

そこでまず、一人一人意味を考えさせ、書かせ、発表させます。

当然辞書を使ってもいいですが、「空気を持て余す」も「生ぬるい息」も辞書には載っていません。

「空気」「持て余す」「生ぬるい」等の辞書的な意味を、「文脈の中における語句の意味」として的確にとらえなおし、理解することをさせなくてはいけません。

当然正解はありませんが、かと言ってどう定義づけてもいいわけではありません。発表後の話し合いの中で、生徒が納得できる解釈を探っていきます。

そのためにまず、最初ですから買ったばかりの辞書をひかせる、というのもありますが、いちいちひかせると時間がかかります。

大切なのは、辞書に載っている語釈を知ることではありません。
それをどのように本文に落とし込み、文脈として適切な解釈を導き出させることが大切です。

私の場合、例えば
  1. あまり冷たくもなく、熱くもない。少しあたたかい感じがする。「-・い水」
  2. はっきりしない。どっちつかずだ。あいまいだ。「-・い態度をとる」
  3. 処置や方法が手ぬるい。厳しさが足りない。「取り締まりが-・い」
といった辞書に載っている語釈をコピーし、文脈に即したものを選ばせ、言い換えをさせています。
単に辞書を引かせるのより、ずっと「思考力・判断力・表現力」を培うのに役立ちます。

空気を持て余す
空気とは「その場の雰囲気」。
持て余すとは「取り扱い方や処置に困ること」。
従って「空気を持て余す」は、会話が「うまくつながらない」(コミュニケーションが円滑にできない)ため、話題の展開ができずその場の雰囲気が気まずくなり、どうしたらよいか困っている状態のこと。

晴れることを放棄したようなぼやけた空
「晴れ」は、天気が良いことの他に「晴れの席に臨む」や「晴れて潔白が証明される」などのような使い方がある。
この場合は「晴れて自由の身になる」の「晴れる」で、他の人に遠慮しなければならない状態から解放されるという意味。
「放棄」は捨て去ることです。
従って「晴れることを放棄する」は、他の人に遠慮しなければならない状態から抜け出すことをやめてしまう、という意味になる。
この明生君の気持ちを、花曇りの空に例えている擬人法

生ぬるい息をはく
「生ぬるい」には、温度が高くもなく低くもない状態のことや、「生ぬるい措置」などの、手ぬるいという意味がある。
しかしここでは、「はっきりしない、どっちつかずだ、あいまいだ」という意味。
「ため息」は、ストレスを感じた時などに大きく息を吐く行為。
明生君は、クラスメイトに遠慮しなければならない状態をどうにかしたいと思いながらも、どうしたらいいかわからずに、それをストレスと感じて大きく息を吐いたのである。

ではなぜコミュニケーションがうまくとれないのでしょう。

まず生徒に考えさせますが、なかなかわからないと思います。
そこで私は、吉本新喜劇的なパフォーマンスをすることにしています。

まず「クラスの人たちは、わざと無視しようとしていますか。これはいじめですか。いじめでないなら、それはどこからわかりますか。」と問います。

そして
  • 川口君は毎朝、先生が来るまでの間話しかけてくる
という叙述に気づかせます。

少なくとも川口君は、明生君とコミュニケーションをとろうと努力しているのです。

「では、実際教室で何が起こっているのか、具体的にやってみましょう。先生が明生君になります。みなさんは川口君です。」と言って教室を一旦出ます。

そして、ガラガラと扉を空け、陰気に「おはよ……」と共通語でつぶやきます。
すると生徒は、まばらに「おはよ……」と応えます。

次にもう一度教室を出て、同じように扉を開け「おはようさん」と上方語で挨拶します。
すると生徒は少しびっくりして「おはようさん」と応えるでしょう。

三度目は、元気よく「おはようさん、もうかりまっか」と呼びかけます。
ノリのいい生徒なら「ぼちぼちでんがな」と応えるでしょう。

そこで、そのノリのいい生徒を川口君役に指名し、挨拶から川口君のセリフまでコントをし、明生の答えまで言わせます。
  • 明生「おはようさん。もうかりまっか」
  • 川口「ぼちぼちでんがな。今日も曇りやな。~」
  • 明生(例)「それがどないしてん。」
  • 川口(例)「桜の季節も終わりやなって思ってん。」
  • 明生(例)「今度天気よかったら花見にでも行こかぁ?」
うまくできるとは限りませんが、テキストから離れてもいいですから、方言によるコントを数回繰り返します。
その上で、明生君の「おはよ」で始まる会話と、今の会話はどこが違うのかを問えば、方言と共通語の違いに気づくと思います。

「おそらく関東地方から関西にやってきた転入生が、方言の違いにより上手くコミュニケーションをとれない状態だったんだね」と押さえます。
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©『僕の妹は「大阪おかん」』制作委員会
原因は言葉の問題だけではなく、主人公の積極性とか、思春期特有の自意識とかの問題もあるかも知れません。
しかし国語科の授業として、あくまで言葉にこだわりたいと思います。