小説には、主人公が剣と魔法の中世ヨーロッパ風の世界に転移・転生する「異世界もの」というジャンルがある。近年アニメ化も盛んで、名前くらい知っている人もいるだろう。
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異世界カルテット©KADOKAWA
小説の造物主

小説はすべて「異世界もの」であると言っても過言ではない。
なぜならそこで語られる世界は、現実ではない、作者が創り出した虚構(フィクション)の世界だからだ。

例え現実世界とそっくりであったとしても、ノンフィクション以外は作者の意図した(作者に都合よい)世界である。
すべての登場人物の運命を操っているのは作者だ。

主人公が悲しみに沈めば雨が降り、運命の分かれ道になれば雷が鳴る。
作者は自然現象すら自由に操る神、造物主なのだ。

もう一人の神

だから私たちは小説を読むとき、異世界に転生した主人公のように「ここはどこで、どういう世界なのか」を知らなければならない。
これが5W1Hに気をつけて読むということだ。

更に大切なことは、造物主の意図(主題)を解き明かすこと。
そのための手がかりが表現技法(レトリック)だ。

表現技法は読者の注意をひきつけ導くための道標なのだ。

天候や景色などの情景描写もそうだ。
情景とは、すなわち取り巻く環境(景色)が主人公の心理(心情)を反映しているのである。

文学的文章を解くということは、入試の場合、造物主が創り出した二千字にも満たない異世界の裏に潜む造物主の意図を説明することである。

造物主の意図は文章の理(ことわり)に従って表現される。
そして、出題者という名のもう一人の神は、この理に従って問題を作っている。

授業とはその理を身につける場でもある。

5W1Hは小説を読み解く最初の鍵

5W1Hに気をつけて読むことが、文学的文章読解の鍵の一つだ。
5W1Hとは
  • Who (だれが)
  • When (いつ)
  • Where (どこで)
  • What (何を)
  • Why (なぜ)
  • How (どのように)
したのか、の頭文字をとったものだ。
これは新聞記事などで必ず書かなくてはならない内容とされる。

物語を読み始めたら、まず「だれ」と「いつ」「どこ」を明らかにしよう。

物語は主人公を中心に展開されるものである。
「だれ」とは主人公はだれでどんな人物かということだ。

主人公の気持ちを解く方程式

B=f(P・E)
             
B=behavior(行動)
P=person  (人間性・個性・価値観等)
E=environment(環境)
 ※“f(○・○)”は関数を示す。

小説における読解問題のほとんどは、文章の意味を答えさせる傍線問題だ。
主人公の心情に変化があったり複数の感情が入り混じったところに傍線がひかれ問題となるのだ。

社会心理学の父レヴィン(Kurt Zadek Lewin 1890-1947)は、「B=f(P・E)」という【レヴィンの関数】を提唱した。行動(B)は、人間性(P)と環境(E)との関数により決定されるということだ。文学的文章の場合Pには気持ち(感情)や考えも含まれる。
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ゴルゴ13 ©さいとうプロ
つまり取り巻く環境が変化することにより主人公の気持ちや考えは変化し、それにより主人公の行動も変化していくということだ。

小説では主人公の気持ちや考えが書かれていないことが多い。
そこでもう一人の神である出題者は、主人公の心情を問う問題を作ることになる。

問われたらまず主人公の直前の環境や直後の行動を調べればよいのだ。