この物語は「星の花が降るころに」です。
「星の花」とは何でしょう。

作品の冒頭に
  • 銀木犀の花は甘い香りで、白く小さな星の形をしている。そして雪が降るように音もなく落ちてくる。
とあります。
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銀木犀の花
この、主人公(仮称:A子さん)が作品冒頭で夏実との思い出を回想する場面は「去年の秋」とあり、銀木犀の開花時期である9~10月と一致します。
六年生の二学期の半ば過ぎのことでしょう。
この時、
  • これじゃ踏めない、これじゃもう動けない、と夏実は幹に体を寄せ、二人で木に閉じ込められた、そう言って笑った。
といい、作品終末部にも
  • 夏実と私はここが大好きで、二人だけの秘密基地と決めていた。ここにいれば大丈夫、どんなことからも木が守ってくれる。そう信じていられた。
と述べています。

銀木犀の花は、A子さんを夏実との関係の中に閉じ込めてしまうものであり、
同時に二人を守ってくれるものなのでしょう。

まるで核シェルターに閉じ込められたような描写ですね。
または、固定された人間関係の中に自分の居場所を求める「仲良しグループ」の比喩ともとれます。

A子さんは、夏実の関係の中に自分の居場所を見いだし、その関係を守ってくれる「お守りみたい」なものが「星の花=銀木犀の花」なのでしょう。

そしてA子さんは銀木犀の花をビニール袋に入れ、中学入学後もずっと持っています。

それから「もう九月というのに、昨日も真夏日だった。」とあるように、
一年後の9月上旬が本作品の舞台です。

まだ銀木犀の花は咲いていませんから、まだ季節的に「星の花が降るころ」ではありません。

ところが最後の場面で
  • 袋の口を開けて、星形の花を土の上にぱらぱらと落とした
と、A子さんは、「お守りみたい」に持っていた、干からびた「星形の花=銀木犀の花」を土の上に落とします。

ですから「星の花が降るころ」とは、最後の場面を指していると考えても良さそうです。

「星の花」とは銀木犀の花のことであり、夏実との関係によって自分が安心できる場所の象徴です。

ところが中学入学以降、夏実との関係には変化が起こり、
「星の花」も「小さく縮んで、もう色がすっかりあせて」しまいます。

そして公園のおばさんの言葉をきっかけに、A子さんは「星の花」を土に返します。
夏実との関係の中に自分の居場所という気持ちを捨ててしまったのです。

これは、核シェルターのような「銀木犀の木の下をくぐって出た」というA子さんの言葉に象徴されます。

「星の花が降るころに」とは、作品終末部の「(自分の安心できる居場所=夏実との関係)を捨てたころ」のことを指しているのです。

ではA子さんは「お守りみない」な「星の花=銀木犀の花」を捨ててしまっても良かったのでしょうか。
  • かたむいた陽が葉っぱの間からちらちらと差し、半円球の宙にまたたく星みたいに光っていた。
と、「丸屋根の部屋のよう」な銀木犀の木漏れ日を「星」としています。
A子さんは、自分を守ってくれる核シェルターの外に新しい「星」を見つけたのかも知れません。

星=自分の居場所を示してくれるもの」と考えてもよさそうです。

ですからこの題名から、「夏実との閉ざされた関係を捨て、新しく自分の居場所を見つけようと歩み出したA子さんの物語」と読み取ることができます。

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