数年前に、匿名の「伊達直人」氏が恵まれない子ども達にランドセルなどをプレゼントしたことが話題になりました。
 「伊達直人」とは、タイガーマスク(原作:梶原一騎。マンガ・アニメの初代です。実在のプロレスラーではありません。)の本名です。
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©梶原一騎・辻なおき/東映動画
 伊達直人は、孤児院出身で、悪役レスラー養成機関「虎の穴」にスカウトされ、レスラーになります。
 終戦後まもなく、世の中に戦災孤児があふれている時代でした。

 「強ければ それで いいんだ/力さえ あれば いいんだ」
 (『孤児のバラード』作詞:木谷梨男 アニメ『タイガーマスク』副主題歌

 とばかり、当時の日本も「力」を求めて邁進していた時代でした。
 そして、その頃は「学歴」が貧困から抜け出す唯一の手段でした。

 時は移り、世の中はグローバル化が進み、再び「強ければ それで いい」「力さえ あれば いい」という新自由主義の考え方が広まってきました。
 こんな時代の中で日本が生き残るにはどうしたらいいのか、40年程前(80年代頃)から教育界でも真剣に模索されてきていました。

 強烈な競争社会の中では、自分に必要な“もの” “こと”は何かを自分で判断し、貪欲に吸収し、成果に結びつけていかなくては、生きのびることはできません。

 そこで生まれたのが「生きる力」です。

 「生きる力」で求められるのは、お互いの考えを尊重し、意見を擦り合わせ調整して一つの結論を導く「話し合い」の力ばかりではありません。

 それよりも大切なのは、まず自分で考え、更に他者からの情報を貪欲に取り入れることで、自分の中で結論をよりよいものにしていく、個人主義的な力です。
 他人に協力させることはやぶさかではありませんが、自分が必要とする情報を集め、自分自身が処理し、自分から行動できるようになりなさい、というのが「生きる力」なのだと思います。

 口を開けていれば棚からぼた餅が落ちてくる、そんな待ちの姿勢では餓死するばかりです。そして「貧困からの脱出」という点では、日本よりもはるかに東南アジア諸国の方が切実です。
 ハングリー精神旺盛な諸外国と、生き馬の目を抜くような競争に打ち勝って生き残るのためには「生きる力」が必要なのだと思います。

 この力をつけるために、これからの授業は、
 活発に意見交換をする場面よりも、静かに自分の追究をし、追究の中で自分の疑問や意見を相手に「聴く」ことで、自分の考えを一層確かなものにしていく
 ……「相談する」とは少し意味が違う、そんな姿が求められるのではないかと思います。
 自分で頭を動かし体を動かさない者は、これからの競争社会の中で餓死するばかりなのです。
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 文科省の考えるグループ学習とは、この活動を円滑に行うための装置という側面もあるのではないでしょうか。

 これからの授業で大切なのは、どのように個の追究を保証するか、ということでしょう。
 この「追究する」という行為や心を育てることこそ、現代社会の中で生き延びるために大切なものであると思います。

 自分は目の前の生徒達にきちんと競争社会で生き残る「力」をつけているか。
 安易に「対話的な学び」と言いながら、安易に「話し合い」という発表会で済まそうとしていないか。

 日々の授業を振り返ってみましょう。

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