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『盆土産』の指導事項は、光村図書の指導計画によると、いずれも「C 読む」領域で、次の内容となっています。
- ア 抽象的な概念を表す語句や心情を表す語句などに注意して読むこと
- イ 文章全体と部分との関係、例示や描写の効果、登場人物の言動の意味などを考え、内容の理解に役立てること。
- ウ 文章の構成や展開、表現の仕方について、根拠を明確にして自分の考えをまとめること。
読解の基本となる「いつ(時間設定)」「どこ(空間設定)」「だれ(登場人物設定)」が生徒にとってつかみづらいものになっている点にあります。
そしてそれ以上に、生徒自身が、自分の経験をもとに解釈してしまうため、よくわかっていないことを生徒自身が意識しにくい点にあります。
実はよくわかっていないことを意識化し、正しい知識を与えた上で
読解に役立ててあげなくてはいけません。
それは教師の役割です。

これは、生徒も夏休み中にニュース等で「お盆の帰省ラッシュ」のお盆ですから、わかると思います。
しかし、8月の何日かをしっかり把握していない生徒も多いのが現状です。この作品の場合は8月13日が迎え盆です。しかし毎年違いますから「今年の場合は」と断りを入れて指導しておきます。
実は、この日程を把握していない生徒が相当数います。
次に、時系列にそった物語の概略を記します。
しかし「いつ頃の話でしょう」と問いかけても、生徒にはわかりません。
たくさん出てくる場合はページを区切って言わせると良いかもしれません。
ここで大切なのは、生徒の「現代」の感覚です。本人が「現代と違う」と思えばそれで正解なのです。
ですから、特に発言の少ない生徒を優先的に答えさせ「そうですね」と肯定的に受け止めてあげると良いと思います。
この中で、当然「登場人物はえびフライを知らない」「えびフライが珍しい」という発言が出てきます。
えびフライは明治時代から高級洋食としてありましたが、庶民は名前すら知りませんでした。
えびフライが知られるようになったのは冷凍えびフライが普及して以降となります。

現在ではどこのスーパーでも売っている冷凍えびフライですが、発売当時は冷凍庫が普及しておらず、輸送技術も未発達だったので、とても珍しいものでした。
東京オリンピック開催に向けて高度経済成長のまっただ中、昭和40年前後の話
であることがわかります。
方言を使うということが、それまで「えびフライ」と言っていた主人公が父親にうっかり「えんびフライ」と言ってしまう理由を考えるヒントとなります。
- 東京の上野汚液から近くの町の易までは、夜行でおよそ八時間かかる。それからバスに乗り換えて、村にいちばん近い停留所めで一時間かかる。
東北線は「握手」(3年)でルロイ修道士も仙台-上野間を往復していますから、きちんと押さえておくと来年役立ちます。
ですから舞台は青森県青森市周辺となります。(作者の故郷である八戸と考えるのが自然でしょう。)
ちなみに当時東京-青森間を八時間で走った夜行列車は寝台特急で、父親が利用した可能性が高いものは上野21:00発-青森7:50着の「はくつる」か23:00発-9:30着の「ゆうづる」の2本です。
ですから父親が降りた駅は、青森の手前に違いありません。

寝台特急はくつる
おそらく、その日の仕事を終えた父親は、昭和30年頃の8月11日の夜に、まだ閉店前の上野のアメ横でえびフライとドライアイスを買って上野郵便局で速達を出し、寝台特急に乗ったのでしょう。主人公が受け取った「伝票のような紙切れ」とはえびフライの領収書だったのかもしれませんね。
ここまでで、だいたい2~3時間はかかります。
この項目については、生徒用に解説したものがあります。
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