十種神宝 中学国語の基礎・基本

稗田先生は、永く公立小中学校にお勤めでした。 その先生からお聞きした、 主に中学校の国語の教材のことなどを 書き留めました。

タグ:登場人物の気持ち

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この記事は、「十種神宝」姉妹サイト「国語学習の手引き」をもとに作成しました。興味のある方はこちらへどうぞ。

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4時間目 いのち  けやき だいさく
欅

いつ・どこ・だれをやりながら、どのような情景か答えさせます。

ケヤキの木に、小鳥がたくさん止まっている情景です。

小鳥の数は一匹や二匹ではありません。
「ふところに だいて/とても あたたかい」くらいの数です。
ぎっしりとケヤキの木に止まっているのでしょう。
こんなに小鳥が木に集まって止まるのは、冬の夜です。
ケヤキは落葉樹ですから、葉がすっかり落ちたケヤキの木に、夜、ぎっしりと小鳥が集まって休んでいるのです。
たくさんの小鳥たちが羽を休めることができるのですから、きっと大きなケヤキの木に違いありません。

「私の心臓は/たくさんの小鳥たちである」というのはもちろん比喩です。
  • 太郎君(A)は太陽(B)のような少年だ。
といった場合、太郎君の「明るさ」や「情熱」等を太陽のそれに例えています。
  • 太郎君(A)=明るい・情熱的=太陽(B)
となります。
大切なことは、(A)のどのような属性が(B)の属性に例えられているか、
(A)=(X)=(B)の(X)の部分をきちんと言葉で書かせて発表させることです。

この詩の場合はどうでしょう。
  • 心臓(A)=たくさんの小鳥たち(B)
(A)は「都市の心臓部」と言うように、ものごとの中心の比喩ですが、この場合、ないと死んでしまう「命のもと」と解釈してよいかと思います。
言い方は、生徒の発言に任せましょう。
  • 心臓(A)=命のもと(X)=たくさんの小鳥たち(B)
冬、葉を散らして、まるで骨だけになったようなケヤキの木の「命のもと」がたくさんの小鳥たちだ、といっているのです。

「ふところに だいて~あたたかいのである」から、ぎっしり集まっている小鳥たちを、ケヤキはとても暖かく感じていることがわかります。

問題は「だから~いきていくのである/だから~いきていて よいのである」の部分で、これは反復法です。
しかし、繰り返すことによって強調しているだけではありません。
微妙に意味をずらしていることに気づかせます。

小鳥たちが「心臓」のようなものなら
  • (小鳥たちが集まってくるので)生きていくことができるのである
となります。
なぜ「(小鳥たちがたくさん集まってくる。)だから、私は生きていくのだ。生きていてよいのだ。」というのでしょう。

これを考えさせ、書かせ、発表させるのがポイントです。

小鳥たちにとって、ケヤキの木は、寒い冬を越すための大切なねぐらです。
大きなケヤキの木のおかげで小鳥たちも冬越しができるのです。

ケヤキはそのことを知っています。
小鳥たちの暖かさを自分の命と感ずるとともに、小鳥たちを守っていこうという気持ちが「いきていくのである」という言葉に集約されます。
そして、小鳥たちを守ることに誇りをもっていることが「いきていて よいのである」という言葉に表れています。

このことを更に「ケヤキの気持ち」として端的にまとめさせます

  • 小鳥たちを守り、共に生きることを喜び、そのことに生きがいを感じている
というのが、主人公のケヤキの気持ちだと思います。

作品の季節と時間帯

作品から、はっきり分かっている季節と時間帯は、次の通りです。

  あしたこそ   春     日中

  おれはかまきり 夏     正午頃

  あきのひ    秋     夕方

  いのち     晩秋~冬  夜

 きれいに順序よく並んでいます。光村図書の意図を感じさせます。
とすると「いのち」は冬、「あしたこそ」は午前中(春の朝は朝露がある可能性が高いので、綿毛は飛びません。)と解釈するのが適当かも知れません。

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3時間目 あきのひ のぎく みちこ
野菊

主人公は野菊。上の写真のような、夕日が沈む頃の野原が舞台です。

この詩は前半と後半に分かれています。
「かぜが/とおりすぎました~」と「だれかに よばれたきがして~」です。

前半で、風に吹かれて野菊の花びらがそよそよとゆれている情景が描かれています。
しかしこの詩では、「わたしは~ゆすりました」と、自分から花びらをゆらしたように書かれています。
実際だと、「ゆすれました」「ゆすられました」あるいは「わたしの はなびらが/ゆれました」となるはずです。

なぜ「わたしは~ゆすりました」と表現したのか理由を考えさせます。

まだ自動詞他動詞については学習していませんが、この表現の意味の違いを言わせることです。
そして、「私は~ゆすりました」から、野菊の気持ちを考えさせ発表させます。

「私は、風さんが通り過ぎたので、『おやすみ、また明日ね』とあいさつしたのよ」というような解釈になるのではないかと思います。

後半で「だれかに よばれたきがして」野菊は後ろをふりかえります。

自分が風にあいさつしたのと同じように「さよなら、また明日ね」と誰かが自分に呼びかけたと思ったのでしょうか。

ふりむくと沈む夕日が眼にはいります。
帰港 川田吉治-1200x1701
「くるくる」とは、丸くて愛らしいさまをあらわしたり、軽く回るようすを表現する擬態語です。

実際に手を「くるくる」回させます。
すると「バイバイ」の動作であることに気づく生徒がいます。

  • 野菊は、夕日が自分に「おやすみ、またね」と手をくるくると振っているように感じたのかもしれませんね。
とまとめて「夕暮れ時、互いに『さよなら』を言い合って別れていく情景」であることをおさえて終わります。

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2時間目 おれはかまきり  かまきり りゅうじ
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まず、いつ・どこ・だれを答えさせます。

主人公はカマキリ、季節は夏。「あつい」「もえる ひを あびて」とあるので、正午過ぎでしょう。場所は同じく野原です。

この詩の特徴は、対句ではありませんが、第1連と第2連が対応していることです。

第1連で「あまり ちかよるな」といっています。
なぜかを理由とセットで答えさせます。

解答の手がかりは次の行からです。

「おれの こころも かまも」とありますから、
  • 自分は攻撃的で、近づく人を鎌で切ってしまうような危ない性格だから気をつけろ
と呼びかけているのでしょう。

ここで敬体常体を教えます。「です・ます調」「だ・である調」と言えばわかると思います。
常体の「~ぜ」から受ける印象とともに考えさせると良いでしょう。
ちなみに「~ぜ」は押韻として用いられています。
押韻以外の行は、命令形や体言止めで、詩全体として非常に力強い印象を受けます。

この時のカマキリの気持ちの手がかりは、「どきどきするほど/ひかってるぜ」「わくわくするほど/きまってるぜ」という擬態法にあります。

「どきどき」は、心臓の鼓動が激しくなるようすをあらわしていて、運動・興奮・不安・恐怖・期待などを示しています。

「わくわく」は、中から外へ激しく動いて現れる意味の「湧く(沸く)」から生まれたことばで、期待・喜びなどで心が弾み、落ち着かないさまを表します。
ただし「どきどき」とは違い、不安や恐怖、激しくなる鼓動を表す際には使いません。

ですからカマキリは、何かを期待し、心が弾み、落ち着かない気持ちでいます。

カマキリが期待しているものは、
  • 第1連の「あまり ちかよるな」や「ひかってるぜ」
  • 第2連の「かまを ふりかざす すがた」や「きまってるぜ」
から、自己陶酔の世界です。
自分の強さに酔いしれ、相手もそれを認めることを期待しているのでしょう。

主人公の名前「かまきり りゅうじ」の「りゅう」は想像上の動物である龍からつけられているのでしょう。

「あつい」のはカマキリ君の心なのかもしれませんね。

音読させるとき、男子生徒はこの詩を音読したがります。
感情移入しやすいのでしょう。

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野原はうたう

中学に入学して最初の教材です。指導事項として、指導書には次の二つがあげられています。
  • ア 文脈の中における語句の意味を的確にとらえ、理解すること。
  • (ア)音声の働きや仕組みについて関心をもち、理解を深めること。
詩は文学的文章です。
詩の文脈の中における語句の意味を的確にとらえるということは、具体的には、次もの二つのことがポイントだと思います。
  • 文学的文章読解の基本である状況設定(いつ・どこで・だれが・何をしたか)を的確にとらえること。そしてその時の登場人物の心情を文で表現すること。
  • 用いられているレトリックをもとに、作者は何を印象的に表現しようとしたかをとらえること。
この二つは今後、文学的文章を読解する際に常に留意しなくてはいけないことです。
この二つのポインれが指導事項「文脈の中における語句の意味を的確にとらえ、理解すること。」となります。

そして、この状況設定とレトリックの二つをもとに作品を解釈してこそ、音読が朗読につながり、二番目の指導事項「音声の働きや仕組みについて関心をもち、理解を深めること。」に発展していくのだと思います。

しかし、この「野原はうたう」の扱いは1時間しかありません。
これではとても文学的文章読解の基礎を教え、理解から表現(朗読や文による説明)にまでつなげていくことは不可能です。

そこで次の「声を届ける/書き留める/調べる/続けてみよう」の4時間とあわせて、5時間扱いとしています。

この教材で私は、中学最初の文学的文章の学習として、文学的文章の読み方の基本を教えています。

1時間目 あしたこそ たんぽぽ あすか

この詩の作者、工藤直子と言えば、生徒たちは小学校一年生の「ふきのとう」という教材の作者です。
  •  よが あけました。あさの ひかりを あびて、竹やぶの 竹の はっぱが、「さむかったね。」「うん、さむかったね。」と ささやいています。雪が まだ すこし のこっていて、あたりは しんと しています。
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冒頭を読んでやると、生徒は思い出すと思います。

そして生徒に「これはいつ、どこの話?誰の話だった?」と問います。多くの生徒は覚えていて答えられると思います。

  • 国語は、何かを説明する文章と、「おはなし」とに分かれています。詩は「おはなし」……文学の仲間です。中学最初の学習として、文学的文章の読み方の基本を学びましょう
  • 文学的文章を読むときはまず、いつ・どこで・だれが・何をしたのか、そしてどう感じたのかをはっきりさせて読むことが基本です。そして「だれ」にあたる人の気持ちを、文できちんと説明できるようになりましょう。
と説明します。
ここまでで授業の前半が終わります。
たんぽぽ

「あしたこそ」でまず指導しなくてはならない内容はです。
段落という言葉は小学校で習っていますから、「詩における段落のようなもの」で、一行空けることを教えます。

第1連から「いつ・どこで・だれが・何をしているか」が、どこからわかるか・なぜそう言えるのかを問います。
そして第一連は、昼間・野原で・たんぽぽが・そよ風の中で綿毛を空に舞い上がらせている状況を説明していることを、きちんと言葉で説明させるのです。

この中から「ひかりを おでこに/くっつけて」は比喩というレトリックであることを押さえます。

作者は意図的にレトリックを用いています。つまり、作者はその部分を読者に印象づけたかったのです。
この比喩から、明るい、天気の良い日中であることや、綿毛の一つ一つが光り輝いている様子が生き生きと連想されることを説明し、「文学的文章にはレトリックがたくさん出てくるから、種類をしっかり覚えておこう」と告げます。

更に「なぜたんぽぽは、綿毛を舞い上がらせているのでしょう。」と問います。

「風が吹いているから」というような答えを「その通りですね」と躱して、「国語の答えのヒントは、必ず文章の中にあります。ヒントを探しましょう。」と返します。
気づいて欲しいのは、直前の「はなくらく ひを/ゆめにみて」であり、綿毛についている種が地面に落ちて、芽が出て花が咲く日を思い描きながらタンポポは綿毛を舞い上がらせているのだ、ということをおさえていきます。

これらは、こちらから説明するのではなく、教師が質問し、生徒に答えさせるべき内容です。
レトリックで表現されている内容は、多くの生徒は読んだだけでわかると思いますが、そのわかったことを言葉にして表現することが国語科では大切なのだと思います。

私は、この力が小学校で鍛えられたかどうかを、このあたりで見切り、その後の指導の参考にしていきます。

第2連は倒置法が用いられています。
普通の順序に並べかえると、
  • あした/たくさんの「こんにちは」に/であうために/どこまでも/とんでいこう
となります。
そして、倒置法では一番最初にくる言葉が一番言いたい言葉であることをおさえます。

「たくさんの『こんにちは』」は、比喩です。
ここでタンポポ(の綿毛)の気持ちを書かせ、発表させ、一時間目を終わります。

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